【Report】Farm Tour|緑茶から発酵茶まで、15種以上の茶葉を生み出すお茶農家。静岡・益井園

日々の暮らしで馴染みのある存在、お茶。ペットボトルから煎茶まで、一口にお茶と言っても、そのスタイルは様々。日本といえば緑茶が最も親しみ深く思える。静岡の山合いにある川根本町で160年余り、5代に渡ってお茶農家を営む益井園さんの元に、2018年のクリスマスイブの日に訪れた。益井さんの特徴は、なんと言っても緑茶から発酵茶(紅茶、烏龍茶)まで15種以上にも及ぶ茶葉の豊富さ。それも、一貫して栽培から販売まで1人で行っている。
 

食の多様化と共に、飲むお茶も変わっていく
なぜ緑茶のみならず、発酵茶まで?そんな疑問に以前、益井さんはこう答えてくれた。「緑茶を飲むようになったのは、意外と最近で。戦前までは、国産紅茶を海外向けの輸出で生産していたし。それと、食の選択肢が日本でも多様化している中で、飲むお茶だけ緑茶というのもおかしな話しでしょ?お茶も時代の変化に応じて、変わっていくべきだと思ったんです。」選択するべくもなく、お茶と言えば当たり前のように緑茶を選んでいたけれど、確かに食事のシーンやスタイルごとにお茶も選べたら、食の時間や味わいもより楽しみが広がるのではないか。そう改めて感じた。
 

甘い香りを茶葉にもたらす、ウンカという存在
畑に移り益井さんに話しを伺う中で今回印象的だったのが「普通は茶葉にウンカがつくと皆んなは嫌がるんだけど、うちでは万歳する」というお話し。ウンカという茶葉に付く虫は、茶葉に噛みつくそう。すると茶葉には黄色の斑点が生じ、それが重なると葉全体が変色してしまうのだとか。そう書くと良いことのないように思われるが、ウンカに噛まれた茶葉は台湾茶では有名な『東方美人』という茶葉として扱われる。(*厳密には東方美人はウンカに噛まれた茶葉のみを使用するが、益井園さんでは現在、茶葉の手摘みを行なっていないため、ウンカに噛まれた茶葉とそうでない茶葉を混ぜて〝こまち〟として販売される)

諸説あるそうだが、ウンカに噛まれた茶葉は中国茶で蜜香と呼ばれる甘いマスカットのような香りを、発酵の過程で放つようになる。緑茶では味わえない特徴がそこに生まれる。農薬・化学肥料を使用せずに茶葉を育てる益井さんにとって、ウンカは美味しい茶葉をつくるために恩恵をもたらしてくれる存在だという。
 

ワインのコンセプトでお茶を見、お茶を作る
益井園さんのHPを見ると『ワインのコンセプトでお茶を見、お茶を作る』という、益井さんの言葉が書かれている。最初にお話しを伺った当時は、分かるようで分からないような思いでいたが、今回、上の写真の10年ものの緑茶の茶葉をいただいて、ようやくその言葉の意味が少し理解できた。つまりワインのようなお茶の楽しみ方の一つの提案として、ヴィンテージの茶葉を楽しむということもあるのだ、と。
 
少量しかなく、一般販売までには至らないが、どこからか情報を探り、海外の方々からときよりヴィンテージの茶葉の問い合わせがあるというから驚きだ。「中国茶ではあたり前ですが、新茶が根強い高評価の日本ではまだまだこれからの価値観ですね」と、益井さん。今回特別にいただいたこの10年ものの緑茶の味わいは、というととてもまろやかで飲みやすかった。
  

お茶をいただく平和な時間
今回、益井園さんの畑に伺って、一番充実していたのは、皆んなでテーブルを囲みながらお茶をいただいた時間。台湾のスタイルで、小さな茶杯で様々な茶葉の試飲。飲むだけでなく、蒸らした茶葉の香りを楽しんだり、色の違いを楽しんだり。そこにあったのはまさに平和な時間。

かつて戦国時代の武将も、茶室に上がるときには刀を外したと言うが、時代は変わっても、茶と向き合い茶をいただく時間の精神性はあまり変わらないように思えた。僕らのFarmer’s Marketで開催しているTea For Peaceのイベント名にも、そんな意味が込められている。まあ、お茶でも一服。これからの時代、必然的にますますお茶は求められていくのではないか?と感じた。

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▼今回のFarm Tourで訪問した農家さん|静岡・益井園
https://masuisanchi.wordpress.com/
 
▼Farmer’s Market Community ClubではFarm Tourを定期的に開催 *活動メンバーも随時募集中
Farmer’s Marketに集う農家さんを中心とした、NORAH(野良)的な感性を持つ多様なメンバー。時代や季節の変化に応じて、柔軟に生きること。自由な発想で自分の生業を生み出していくこと。日々変わる状況を楽しみ、力に変えていく。そんな生き方を実践しているのが、このFarmer’s Marketに集う人々です。

いま、10年目を迎えるFarmer’s Marketにおいて、農家さんを支え、共に学び楽しみ、農的暮らしの探求するためのコミュニティが必要だと考えました。その活動の中心となるのが、このFarmer’s Market Community Club。
都市における農や食の新たな関わり方の提案の一つであり、実験の場でもあるFarmer’s Market。このムーブメントを更に発展させ、継続していくための、メンバーを募集します。
http://farmersmarkets.jp/communityclub/
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2019.1.10

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