2019年7月より、ファーマーズマーケットでは、ゴミの出ない理想の買い物を実験してみる量り売りのマーケット「NAKED~waste less market~」を毎月開催してきました。
プラスチックでの個包装は一切せず、マイバッグや空き瓶、容器など自宅にあるものでごみを出さずに買い物できる体験を作ってきた「NAKED」。本企画は2020年2月で最終回を迎え、今後は新たなテーマのもとにマーケットをよりサスティナブルな場にするためのアクションを起こしていきます。
まずは、2020年4月からマーケットでのプラスチック製レジ袋の提供を終了します。
こうしてマーケットでもごみ削減に向けてアクションを起こしている今、私たち1人1人にできることは何でしょうか?
NAKED -waste less market-最終回では、量り売りやエコな製品の販売に加えて「今、私たちができることを知る」というテーマで3つのトークセッションを開催しました。テーマごとに、レポートをお送りします。
全体のモデレーターは、NAKEDの企画を一緒に進めてきた「斗々屋」のメンバーの菊池博文さん。地元の食・生産者をブランディングでサポートする「H3 Food Design」の活動もされています。
海洋プラスチック問題の今
1つめのトークセッションのテーマは、海洋プラスチック。「NAKED」に初回から出店している「エコストア パパラギ」の武本晃彦さんにお話していただきました。神奈川県・藤沢でプラスチックフリー生活を提案する「エコストア パパラギ」は、40年以上海に潜り続けているダイバーである武本さんのお父さんの声かけによって始まり、プロダイバー4人で運営されています。
武本さんのお父さん・匡弘さんによると、40年前は、日本中どこの海に顔をつけても、宝石箱をひっくり返したような景色だったそう。
そんな海に、30年ほど前から少しずつ異変が出始め、サンゴや海藻類が減ってきたといいます。そして20年前から魚やサンゴが激減し、沖縄本島の周りのサンゴはおおよそ97%が死滅してしまっているそうです。
海に沈む、目に見えないプラスチック
世界で生産されているプラスチックは、年間でなんと約4億トン。そのうち、約1000万トンが年間で海に流れ込んでしまうそう。深海に沈み、生分解には数百年かかります。その間にも、細かくなったマイクロプラスチックが海の生物に悪影響を及ぼしてしまいます。
マイクロプラスチックの一大要因の1つが、私たちの服にも使われている化学繊維。
プランクトンが間違って捕食してしまったり、クラゲに繊維が巻きついてしまったりするケースが多いようです。
プラスチックストローによってウミガメが被害を受けている写真を見たことがある人も多いかもしれませんが、目にはほとんど見えないレベルでも海や海の生物に影響が出ています。
そんな今、すぐに私たちが取り組まなければならないのは、海洋に流出するプラスチックを減らしていくことだと武本さんは言います。
プラスチックと、どう付き合っていく?
このとうな現状を知った上で、私たち1人1人はどのようにプラスチック付き合っていくべきなのでしょうか?
プラスチックが誕生したのは約100年前と、歴史は意外と浅いそうです。
開発された当時は、軽くて万能な素材として評価され、象牙などを代替できたことは動物保護の観点からも意味のあることでした。
しかし、1950年以降から使い捨ての文化が加速し、プラスチックごみ問題が深刻化しました。
年間で生産されるプラスチック4億トンのうち、半分以上が使い捨て目的の容器や梱包材なんだそう。つまり、生産されたその年のうちに捨てられてしまうのです。
ペットボトルに限っては、毎年4800億本が生産されており、これは横に並べると地球何周分にもなります。
そんな今、私たちが必要なのは「正確な情報を集めること」だと武本さんは言います。
情報を知ったうえで、1人1人がプラスチックとの付き合い方を考えて行動に移していくことが大切です。
無理をせずに「1日1つ、できること」
武本さんの「エコストア パパラギ」では、プラスチックフリーの生活を”強要”せず、あくまで”提案”型のアプローチを取っています。
プラスチックも紙も全て限りのある資源であること、その処理が追いついていないことをお客さんに伝えた上で、自分なりのアクションを起こしてほしいからだといいます。
武本さんにとって、大事なのは「無理をしない」ということ。
継続は力なり、という言葉もあるように、無理をして匙を投げてしまうのではなく「1日1つ、できること」を実践し、自分がプラスチックごみの削減に着実に進んでいることを実感しながら続けていくことが大切だと言います。
マイバッグで買い物をする習慣をつけるなど、自分が「1日1つ、できること」を考えて実践していきたいですね。
文・写真 松丸里歩
ープロフィールー
Farmers Marketスタッフ。愛称はまっちゃん。都市での循環やつながりのデザインに興味がある。ワークショップを企画したり農家さんとコミュニケーションを取ったりしながら、その可能性を楽しく探究中。