毎週末、新鮮な食材が農家さんたちから届くファーマーズマーケットにシェフ自らが赴き、旬の食材と食の魅力をライブ感あふれる料理とともにキッチンカーから提供する「FRESH LIVE KITCHEN」。新たにスタートした当企画の記念すべき第1回目のゲストにお迎えしたのは、真夏の会場に鮮烈な香りとフレッシュな料理を届けてくれた、内藤千博シェフ率いるNight Marketチーム。今回は、農家さんとシェフとの“心の通った関係”から生まれた料理を振り返るアフターレポートとして、ファーマーズマーケットスタッフの田中と北城がオープンしたばかりの内藤さんの店を訪ね、料理のポイントとともに実施に至るまでの経緯について伺った。まずは、そのPart.1をお届けする。
田中:新店舗のオープン、おめでとうございます。そして、先日はありがとうございました。今回が初となる「FRESH LIVE KITCHEN」で、L’EffervescenceやĂn Đi時代からマーケットを日常的にご利用いただいていた内藤シェフをトップバッターに迎えることができ、また、新たにファーマーズマーケットの近所でNight Marketを立ち上げられたタイミングでこの企画がもち上がり、ともに並走してきたなかで、ひとついいかたちでスタートをきることができたと思っています。
内藤:ありがとうございます。私としても久しぶりのファーマーズマーケット出店を楽しませていただきました。
北城:内藤さんの料理をマーケットで食べることができて、それだけでも感動したのですが、実際に料理を提供してみていかがでしたか?

内藤:実際にやってみて見えてきた課題もありますが、まずは楽しくやらせていただいたのと、いつもファーマーズマーケットに食材を届けてくださっている農家さんたちには喜んでいただけたのではないかな、というところで無事にやり切れたと思っています。
北城:まさか6品も料理のバリエーションをご用意いただけるとは思っていなかったので、驚いてしまいました。“旬の野菜を使用する”ことがこの企画の趣旨でもあったわけですが、料理に使用する食材はどのようにして決めていかれたのでしょうか。
内藤:「FRESH LIVE KITCHEN」の前週にチームでファーマーズマーケットに行った際、どのような食材が使用できそうか見てはいたのですが、来週も同じような食材が並ぶことを想定しつつ、事前に送っていただいた出店者リストを見ながら、野菜だけではなく、豆腐や豆乳、スパイスも使ってみようかな、とイメージを膨らませながらメニューを決めていきました。本当はもっと品数を用意していたんですけど、いろいろ削って最終的に6品になったという感じでしたね。マーケットには使いたい食材がたくさんあって、ついつい品数が増えてしまって(笑)。
北城:そうだったんですね(笑)。どれも豪華なメニューにワクワクしてしまいました。

内藤:店で出しているメニューをアレンジした料理もありましたが、せっかく暑いなかマーケットに足を運んでもらうのであれば、温かいよりも冷たいほうがいいだろうと思い、トマトのフォーは冷製にすることにしました。動物系の出汁ではなく野菜の酸味を効かせた魚介出汁の滋味深い料理のほうが暑さにもマッチするよね、とマーケットにお越しいただく方のことを想像しながら、農家さんとの会話を基に食材を選んでいきました。

北城:魚介出汁のほうが野菜の旨味を引き出せるのでしょうか?
内藤:そういう理由もありますし、少しテクニカルなことを言えば、動物系の出汁は冷やすと固まってしまうので、それで魚介出汁にしたという理由もあります。
北城:なるほど、そういうことだったのですね。当日のマーケットでは冷製トマトのフォーも人気でしたが、私は個人的にパンナコッタがお気に入りでした。
内藤:最初は豆腐を使いたいというのがあってパンナコッタをメニューに加えたのですが、ラベンダーの独特な香りと合わせて、あまり手を加えすぎず、できるだけ素材の味をピュアに楽しめるような組み合わせにしようと、豆乳、ココナッツミルク、ラベンダーを使用しました。実は、料理はコース仕立てになっていたんですよね。「冷製きゅうりスープ」にはじまり、「厚揚げとビーツ、すもものソムタム」「ズッキーニのフリット ヨーグルトソース」「チェンマイソーセージ」「冷製トマトのフォー とうもろこしの天ぷら」、そしてデザートに「豆腐とココナッツミルクのパンナコッタ 桃とラベンダーのソース」。少し料理のポイントもおさらいしておきましょうか。

「ズッキーニのフリット ヨーグルトソース(写真左上)」は、黄色と緑のバイカラーのズッキーニが「火を入れるととうもろこしのようなホッコリとした甘みが出て美味しい」という話しをGreen Basket Japanの加藤さんと事前にしていたので、フリットに。そこにデュカというスパイスとヨーグルトのソースを添えることにしました。食材に水分が多いと重たくなってしまうので、そういうときは揚げる前に塩をひと振りして水分を出しておくと、カラっとした食感に仕上がります。これからの季節であれば、ナスやオクラでも美味しくいただけますね。
「チェンマイソーセージ(写真左下)」のポイントは、ソーセージのつけ合わせにした赤玉ねぎとマイクロきゅうりのピクルス。お肉もそうですが、焼き魚にも合いますし、彩りとしてサラダのアクセントにもできるので、とても便利なアイテムなんです。店でも何種類かの野菜のピクルスを常備しているんですよ。赤玉ねぎは、さっと湯通ししてからピクルス液につけ込むと、辛味と雑味がとれて美味しく仕上がります。
続いて、「豆腐とココナッツミルクのパンナコッタ 桃とラベンダーのソース(写真右下)」。週末が暑いのはわかっていたので、ライトにさっぱりと食べれるモノがいいと思い、豆乳を使用しました。エスニックのニュアンスを出すためにココナッツミルクを入れ、桃とラベンダーのソースをエキゾチックに仕上げました。ラベンダーのジュレは、乾燥させたラベンダーの蕾を枝と一緒に分解して煮出し、そのラベンダー水にレモン果汁と砂糖を加えて蕾を戻しながら濃度を整え、冷やして仕上げます。フレッシュなラベンダーは時期が限られていますが、ドライラベンダーでできるので、通年で楽しむことができます。
「冷製トマトのフォー とうもろこしの天ぷら(写真右上)」は、トマトを1/4に切り、塩を打って蒸し煮にします。蓋をして火を入れることで野菜自身の水分で香りや旨味を逃さずに調理できるんです。そこに昆布出汁を入れてトマトの鮮烈さを際立たせながらスープを伸ばし、ナンプラーで味を整えました。とうもろこしのフリットをのせたのは、食感的にも旨味的にも最後まで飽きずに料理を楽しんでもらいたかったから。甘みのある野菜がいいアクセントになるので、玉ねぎでも代用できますし、彩りを加えるという意味では、そこにピーマンや万願寺とうがらしなどを組み合わせてもバランスがいいと思います。

冷製きゅうりスープ
「冷製きゅうりスープ」は、きゅうり、キウイフルーツ、大葉をミキサーで混ぜ、塩(きゅうりの具合をみて必要であれば砂糖)を加えて味を整えます。キウイフルーツのフルーティさ、大葉の爽やかさ、きゅうりの瑞々しさ、そこにフレッシュなアンチョビの旨味が合わさったスープは夏にぴったりです。

店で提供している「ビーツとカツオのソムタム」
「厚揚げとビーツ、すもものソムタム」は、普段店のメニューとして出している「ビーツとカツオのソムタム」を今回のマーケット用にアレンジし、カツオではなく厚揚げを入れて、すべて植物性のモノで勝負しました。ニンニク、パクチーの根っこ、青唐辛子をクロック(=鉢)に入れ、そこにナンプラー、砂糖、レモン果汁、オリーブオイルを加えて即席のドレッシングをつくり、ビーツと和えて厚揚げと合わせていきます。鉢のなかから目の前で香りが立つとライブ感が出ますよね。今回はすももを使用しましたが、これから旬を迎えるぶどうを使用しても美味しく仕上がります。
北城:ラベンダーのジュレの使い方には、ラベンダー農家「ラヴァンドの小径」の古郡さんも驚かれていた様子でした。どの料理もそうでしたが、やっぱり食材の組み合わせがシェフならではの発想でしたよね。フードだけではなく、「BASIL HOUSE」さんのバジルを使用したドリンク「バジルスマッシュ」もインパクト大でした。

バジルをふんだんに使用した「バジルスマッシュ」
シェフ × 旬の食材がもたらす、食の魅力。「FRESH LIVE KITCHEN」アフターレポート 「Night Market」編【Part.2】
2025.8.26