野毛山カレー食堂

野毛山カレー食堂

スパイスの効いたピリッと辛いアジアンカレーが食べたい……そんなとき、ふと黄色いキッチンカーが思い浮ぶようになったら貴方も通かもしれない。リターナブルな黄色いプレートに盛り付けられるカレーは、タイ料理に大きくインスピレーションを受けている。もともとテレビ関係の仕事に就いていた宮田さんと粟田さん、野毛山カレーの物語はこの二人から始まる。

信頼が紡ぎだす一杯のカレー

ともに美大を目指していた宮田さんと粟田さんの二人が出会ったのは、16歳のときだった。美大研究所で知り合って以来、互いに意気投合。卒業後は、それぞれ東京と愛知でテレビ関係の仕事をしていたが、離れていても年に一回は会う仲だったという。

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(ある日マーケットにリーゼントでカッコよく登場した粟田孝さん。ツイストが得意)

テレビの現場にはいつもケータリングが用意され、いつかは自分でもやりたいと思っていたという宮田さん。先輩がケータリングビジネスを始めることがきっかけとなり、自らもケータリングを始めることにした。メニューは、もともと作るのが趣味だったというカレーに決まり、2008年粟田さんと一緒に横浜の実店舗とフードカートをスタートすることになる。

プラスよりも、マイナス

メニューは、パッポンカレー、グリーンカレー、キーマカレー、トマトチキンなど全部で10種類。すべて宮田さんが考案し、粟田さんがキッチンカーで販売している。

「基本のスパイスは8~9種類を厳選して使っているんだ。何十種類ものスパイスを重ねて味付けするのではなく、自分の作りたいカレーに最低限必要なスパイスを使う。どのカレーも基本のスパイスはすべて同じで、ダシとソースをそれぞれのカレーによって変えているよ」と宮田さん。

スパイスは入れれば入れるほど美味しくなると思われがちだが、野毛山カレーのスパイスに対するポリシーは『プラスよりマイナス』だ。

カレー写真グループ

なぜ宮田さんと一緒に仕事をしようと思ったの、と粟田さんに尋ねてみると「剛がやるっていうからさ」と、思いがけずシンプルな答えが返ってくる。信頼できる人とともに仕事をする。生きるなかで大きな割合を占める仕事において、大事な考え方かもしれない。

「儲けたいなら移動販売はやめたほうがいい」そう語る粟田さんに、ではなぜ続けているのと尋ねると、「美味しい料理を食べてもらいたからだよ!本当に料理が好きな奴にしか、この仕事は続けられないね」と返ってきた。いつも素早くカレーを盛り付ける粟田さんは、「あいつは天才だよ」と宮田さんが作る料理のセンスについて誇らしげに語る。

目の前にいる人への信頼から生まれる一皿のカレー。四半世紀を越える二人のつながりを知れば、一口がより味わい深く感じられるだろう。

 

そんな野毛山カレー食堂の長年の夢であったという「自社製作のレトルトカレー」は、2021年ファーマーズマーケットで初舞台を迎える。スパイスを極限まで抑え、素材のうま味やコクを最大限引き出したオリジナルカレー。思わず腹の虫が鳴いてしまいそうだ。