茨城/どまんなか野菜

茨城/どまんなか野菜
栽培方法 水耕栽培 土耕栽培
肥料 化学肥料 有機肥料(購入) 有機肥料(自家製) 無肥料
雑草対策 除草剤 手刈り 放置 その他
病害虫対策 殺菌剤 殺虫剤 手潰し その他
種苗会社より購入 自家採種

 
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東京から車を走らせること1時間半。茨城県石岡市、筑波山の麓にある『どまんなか野菜』本橋さんの畑を訪れた。
 
農業を始めたきっかけ

 
もともとは薬局で働いていたという本橋さんだが、当時は海外でバックパッカーをするための資金調達として就職していたそうだ。5年間働いたのち、タイからカンボジア、ベトナム、ラオス、中国、チベット、ネパール、インド、パキスタンに至るまで旅を続けたのだが、マザー・テレサに傾倒していたこともあり、NGOで活動していた友人との繋がりで、カンボジアのスラムで日本語の先生をしていたときに出会った子どもたちと心を通わせるなかで、ある気づきがあったという。それは、住んでいる家はボロボロなのに、なぜかキラキラと笑顔を輝かせていた子どもたちの今を生きる姿だった。それがきっかけで旅を続けるにつけ、“本当の豊かさ”とは何かを考えるようになり、やがて彼の人生に大きな転機をもたらしたのだ。
 

 
帰国後、海外経験を経て様々な状況を目の当たりにした本橋さんは、どんな環境であれ、人間はどうしても食べないと生きていけないことから、衣食住の「食」に焦点を当てようと考え、種を蒔き始めたそうだ。そして、暮らしを見つめ直そうと百姓の道へ進むことに。3.11の震災直後、NPOの活動を通して出会っていた、ベトナムから帰国したばかりの梨恵さんと石巻のボランティアで合流し、被災地の様々な状況や人間の根幹部分を目撃する中で、やはりやりたいことをして生きていこうと意思を固め、自分の食べるものは自分でつくりたいという思いから畑を始めることに。風評被害の最中、表土をスコップで5cm削る作業からのスタートだったという。当初は家庭菜園の延長のようなかたちで2人で始めた畑も驚くほど楽しく続き、あっという間に今日に至ったという。どうせなら自分たちでつくった旬のものを食べたいというこだわりがあるため、旬の時期にしか食べられないトマトを一口頬張れば、トマトを待ちわびていたかのような衝撃が体中を駆け巡るという。
 
型にはまらない自分なりの農法

 
「6年間、夏野菜と冬野菜が採れる時期は、お客さんに会いに行く感覚で青山のマーケットに出店しています」

少量多品目、安心安全を掲げ、季節ごとに約100品種の野菜を農薬や化学合成肥料、有機肥料(動物性・植物性)も一切使用せずにつくっている本橋さん。農薬や化学肥料を使用しない栽培方法は、親世代の化学肥料を用いた慣行農業とは違うやり方を探すなかで見つけ、子どもが産まれたこともあり、農薬肥料を持ち込まない、持ち出さないを遵守し、草を敵にせず出来るだけ自然を味方にした土づくりを実践している。トマトやナスは、野菜セットをつくるなかで飽きられないよう、いろんな品種を育てているという。型にはまらず、自分で失敗しながら覚えることが農業を習得する一番早い方法だと語る本橋さんは、就農時の研修を受けずに独学で農法を習得していったそうだ。それだけに、最初は種を蒔く時期がずれたりと、収穫できないこともあったそうだ。
 
土のバランス

 
山から拾ってきた落ち葉に稲藁を刻み、米ぬかを振りかけて水を撒いて踏み込む。踏込温床といって、その発酵熱で冬でも野菜を育てやすい培土をつくり、2月に夏野菜の種を撒いているという。わざわざ昔ながらの方法を踏襲するのは、3年寝かせたものが土となり、それが育苗土として使えるからだ。土の力を最大限発揮するために畑の土のバランスは常に見ているし、畑を裸にしないように草を生やしたり緑肥を育てているという。麦類は根っこが1m以上伸びるので、それによって土を耕しながら微生物や菌が住みやすい環境をつくっているし、野菜にとっていい菌もわるい菌もいるけど、それらが共生できる畑をつくっている。土にいろんな菌が生きているからか、キノコがたくさん生えていた。「畑の表面から20〜30cm下がったところに根が雨水を吸い上げるための耕盤層があるのですが、トラクターなどが通ると、その層が硬くなって野菜が育ちにくくなるので、それを麦などで根を張って壊すんです」。そう言いながら、おもむろに2mはある棒を土に突き刺すと、そのままグイグイと最後まで土の中に入ってしまった。
 
採種のルール

 
種も多様性。日本や先進国の種の採り方は強いものだけを選抜しているが、遺伝子的には情報が狭まってしまうという。一つのものだけではなく、いろんな情報を残せるように採種することを心がけているし、海外の先住民たちは、強い種だけではなく、虫に食われたものや病気になった弱いもの、そういったものも混ぜながら採種しているそうだ。市販で売っている種苗会社の種は、肥料も農薬もしっかり使った野菜から採られるので、ここでそれを蒔いて育てても肥料も農薬もかけてもらえず、うまくは育たない。そうであればと自分で種を採るようになったという。大体7世代、つまり7年種を採り続ければ、固定されていくそうだ。
 

種採り用の野菜には印を付けており、自分の目で見ていいなと思えたり、食べて美味しかった苗には早くから印を付けて、黄色く熟してきた頃にその種を採るという。
 

 
「儲けようとすることより、自分たちの暮らしが豊かになる、楽しむためのツールとして農業を考えています」

“本当の豊かさ”とは何か。食から人々の暮らしを再考するにあたり、畑はその最初のきっかけを与えてくれる場所のようだ。かつてカンボジアの子どもたちが教えてくれた“今を楽しんで生きる”という思いが畑を通して伝わってくるのは、この輝きが今日という一日を人生のどまんなかに据えた『どまんなか野菜』という農園名に込められた本橋さんの思いがあるからだ。


 
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