TOKYO COFFEE FESTIVAL2024年5月25日(土) /26日(日)

今年もTOKYO COFFEE FESTIVALを開催します。

今回は「ジャズ喫茶」の独自性や独立的な在り方から発展した「インディペンデント」であるコーヒーショップや、個人の生き方としてコーヒーを淹れている方々が全国から青山に集結します。

また、それらの店舗を取材した小冊子(ZINE) “PAST-PRESENT INDEPENDENT COFFEE SCENE” も発刊し、コーヒーのもつインディペンデント性を誌面と会場の雰囲気で紐解きます。

こだわりのコーヒーやフード、そしてグッズ。さらにはDJやライブによるコンテンツで、5月25日(土)・26日(日)の2日間、国連大学中庭のイベント会場を熱く盛り上げます。

詳細は、公式ウェブサイトをご覧ください。


TOKYO COFFEE FESTIVAL 2024
日程:2024年5月25日(土)~26日(日) 10:00-17:00
入場料:無料
場所:国際連合大学中庭(〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-70)
主催:NPO法人Farmers Market Association
共催:Good Coffee

website:https://tokyocoffeefestival.co
Instagram:@tokyocoffeefestival
飲み比べセット事前販売:stores.jp
連絡先:team@tokyocoffeefestival.co (担当:荘司・拝原)


◆ 特別掲載|『自由の名の下で味わうコーヒー』アーバン・コーヒー・ロースター(香港) |歐祖華(ゲイリー・オウ)

-小冊子(ZINE) “PAST-PRESENT INDEPENDENT COFFEE SCENE”より-

写真①ユニークなコーヒー体験を届ける「2-WayCup」と、ブランドの顔になっているコーヒー豆

香港民主化デモの後、スペシャルティコーヒーのカルチャーが香港で花開いた背景には、自由を求めて活動する若者の姿があった。

 コーヒーは小さい頃から地元のレストランで飲んでいましたが、安いコーヒーだったし、味もイマイチ。大学の頃にはスターバックスができたので、居心地も良いし、カフェでチルアウトするために友達を誘って、よく行っていました。

大学では金融リスクマネジメントと統計学を学んでいたので、卒業後はデイトレーダーとしていくつものディスプレイの前に座り、一日中それを見つめるような生活を続けていました。仕事柄、プレッシャーに打ちひしがれる毎日でしたから(笑)、息抜きにと、職場でエスプレッソマシンを購入したんです。そうこうしているうちに、自分がコーヒーを淹れる技術は向上したけど、すでに味が決められたコーヒー豆を買う限り、これ以上コーヒーを美味しくすることはできないことに気がつき、家庭用焙煎機も揃え、台湾やアメリカの生豆を購入して独学で焙煎しはじめたんです。1年、2年と続けるうちに焙煎の腕は上達していき、そうこうしていると、友人から「いつ焙煎所をつくるの?」と聞かれるようになりました。それで、週末にポップアップで自分が焙煎した豆を地域のファーマーズマーケットや友人がやっているホステルで販売するようになったんです。平日はデイトレーダー、週末はコーヒー屋という生活でした。

すると、ある時その友人から「ホステルにカフェをつくりたい」という相談があって、コーヒーに興味が向いていたこともあり、6年間勤めた会社を辞め、正式に「アーバン・コーヒー・ロースター」としてお店をやることになりました。

ーーシンプルに香港のコーヒーカルチャーについてお聞きしたいのですが、どういった状況になっているのでしょう?

 日本ほどは進んではいないと思いますが、それでも十年前くらいと比べると、かなり状況は変化しました。砂糖やミルクを入れて飲むレストランのコーヒーに代わって、スペシャルティコーヒーを扱う店が増えつつあります。二〇二〇年にはブルーボトルコーヒーもできて、スペシャルティコーヒーというものがより身近に感じられるようになった。ただ、二〇一九年に起こった香港民主化デモがコーヒー屋の有り様に大きな影響を与えることになります。比較的、年齢層が高い親中派の人たちはこれまで通り、従来の店に行くけど、民主派で教養のある僕らのような若者はそれをやめ、自由を求めてスペシャルティコーヒーの店へと足を運ぶようになり、二分するようになりました。

要するに、スペシャルティコーヒーの店は僕たちにとって、“これから”の象徴だった。スペシャルティコーヒーが香港で花開いた背景には、自由を求めて活動する若者の姿があったんです。

ーー社会運動とコーヒー屋の関係というのは、フランスや日本など、これまでの歴史にも散見されますよね。日本では、ジャズ喫茶が学生運動の思想を巡らせる文化的拠点であり、サンクチュアリとしても機能していました。現代の香港でも同じように、スペシャルティコーヒーが若者の思想を支えていたんですね。

歐 そういった社会運動の背景や、コロナ禍で外に出られず、コーヒー屋をやりたかった人たちが投資家と手を組んで一斉にお店をはじめたことによってスペシャルティコーヒーのお店が急激に増えたんですが、その後に教養がある人たちの多くが香港からイギリスやカナダなどの海外へと逃げ出したこともあり、結局、半分近くの店が閉まってしまいました。私自身もイギリスやカナダに行きましたが、西洋のコーヒーカルチャーはすでに確立されていることもあり、真新しさという点では、アジアがいま一番面白いと思っているんです。もちろん、日本もそのひとつです。

ーー歐さんを外に向かわせるものは何でしょうか?

 香港経済の停滞もありますが、コーヒーやそのまわりにあるカルチャーのことをもっと深く知るためには、海外での新たな繋がりや刺激が必要です。自分の店から出てイベントなどでポップアップ出店するのもそのためです。タイ、韓国、マレーシア、デンマークは特に大変でした。三十五度の炎天下で十二時間立ち続けてコーヒーを出していましたから(笑)。でも、そうした経験から各国の文化に根差したカルチャーにインスパイアされることが多く、そこで得たアイデアを香港に持ち帰り、コーヒーカルチャーを発展させたいんです。「2ウェイカップ」のアイデアもそのひとつでした。

ーーその「2ウェイカップ」について教えていただけますか?

 「2ウェイカップ」は、バリスタチャンピオンシップで競争していた時に思いついたんです。コーヒーの味を競うステージ上で、コーヒーだけでなく、道具にもこだわりたいと思うようになり、カップも自分が美しいと思えるものをと色々試すうちに、飲むカップの素材や形状によって味に変化が生じることに気づいたんです。甘味が出るもの、酸味が出るもの、それぞれに一長一短。その得意な部分を組み合わせてしまえば、コーヒー体験としてユニークなものになるんじゃないか、と。それで、知り合いのセラミックアーティストと一緒に開発を進め、プロトタイプをつくってもらいました。陶器はろくろを回して形つくるので、左右対称になると思うのですが、このカップは左右非対称の形状なので、手づくりしなければならない。大量生産には向かないけれど、手づくりの温もりを感じられると思います。

ーーなるほど。一杯のコーヒーのなかで違いを感じ、自分の好みがわかってくれば、一度飲んでみて美味しくなかったからもう飲まないということがなくなるかもしれない。

 スペシャルティコーヒーがなかなか認知されないのは、美味しくないからではなく、その美味しさを知らなかったり、テイスティングの仕方、微差や奥行きがわからないから。なので、このカップを使用して本来の美味しさを導き出す。それが、より多くの人にスペシャルティコーヒーを楽しんでもらう近道になると思ったんです。

ーー確かにおっしゃる通りですね。多くのコーヒー屋さんに集合していただくトーキョー・コーヒー・フェスティバルは、コーヒーがもつ本当の美味しさやギャップを直に感じていただくことを目的に開催しているので、いまのお話、とても共感できます。最後に、歐さんにとっての「インディペンデント」とはどんな存在ですか?

 香港の人にとって、政治的にその言葉を簡単には口にできないのですが、あくまでコーヒー屋の立場で話すのであれば、大事なのは、世の中にはびこっている正しい、正しくないという価値基準から距離を取り、自ら考えやスタイルをつくること。インディペンデントなコーヒー屋というのは、独自のアイデアや思考をもち、目の前の人に対してそれを表現できる存在だと思っています。

URBAN COFFEE ROASTER
Website:https://ucr.hk
IG:urbancoffeeroaster
Address:7 Bristol Ave, Tsim Sha Tsui


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