山梨/勝沼インディーズワイン

栽培方法 | 水耕栽培 土耕栽培 |
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Farmer’s Marketには、多様な食材やフードが溢れている。だからこそ、ペアリングのドリンクも、ぜひこだわりの一杯を選んでほしい。勝沼インディーズワインさんでは、山梨県・勝沼で甲州葡萄を自家栽培し、ワインを手造りで生産している。
一見すると70年代ギャングのような出で立ちの秋元さんは、生粋のワイン好き。どれくらい好きかというと、大学時代の卒業論文テーマを『ワイン』にしてしまうほど。彼が初めてワインと出会ったのは幼少期へと遡り、祖父が飲んでいた葡萄酒をこっそり盗み飲みしたときだという。
「覚えているのは、とにかく『辛い、苦い、不味い』ということ」と、目を細めて語る秋元さん。初めて覚えたワインの味は、きっと苦くて甘酸っぱい思い出だったのだろう。けれど、年を重ねるにつれて、その魅力にどっぷりとハマっていくことになる。
(初めてのワインは「辛く、苦く、不味かった(笑)」と、秋元さん)
ワイン造りを始めたのは、地元で葡萄を育てる知人から誘われたことがきっかけだった。長年、公務員を務めていた彼は退職を機に、大好きなワインを造ることにした。現在では、山梨の耕作放棄地を4反分購入し、自分でも赤白8種類の葡萄を育てている。
「水分が多いぶどうだと、成分が分散して美味しいワインを作ることができないんだ。水分が少なくて、実の引き締まった葡萄がワイン作りに適しているんだよ」と秋元さん。彼の畑は傾斜にあるため水はけも良く、ワインにピッタリの葡萄が育つ。
こうして収穫した葡萄は、地元のワイナリーを借りて醸造。葡萄の生産から、ワインの販売に至るまで、「どこの」「誰が作ったか」すべて彼の分かる範囲で行われている。「ワインも農作物と同じ」というセオリーから、今日も自らマーケットへ出向いて、手渡しでお客さまへと届けるのだ。
勝沼インディーズワインでは、すべてのワインを小ロットで生産している。大きいワイナリーではないからこそ、自分が面白いと思える個性的なワイン造りを心置きなくできるのだ。そのため、自分で造ってみたいと思うワインがあれば、ある程度は自由に造ることができる。
「今育てている葡萄の種類は、パリのワインにインスピレーションを受けて作っているんだ。似せようと思っても、その土地の気候や品種によって、味は少しずつ変化するもの。目指したい味があっても、自分たちではどうにもできないこともあるね」と、理想の味に近づけるのはそう簡単ではない。
「次は、スペイン産ワインのようなフルボディのものも造ってみたい」。そう語る彼の目は、キラキラと輝いて、まるで少年のよう。ワインに対する好奇心は、かつてスペインを旅した青年時代から全く衰えていないのだ。
「一年の歳月をかけるワイン造りでは、面白さよりも不安が常に上回っている。種まきのとき、収穫のとき、手入れのとき、雨が降ってきたとき……けっして楽しいだけでは終わらないよ。そうして、ワインが出来たときに、やっと不安も拭われて、『面白い』『もう一度作ろう』と思えるんだ。それまでの行程ではとてもじゃないけど思えないね!」とジョークを飛ばす秋元さん。
そんな彼が、インディペンデントなワイナリーシーンを山梨から盛り上げている。市場に出回るものだけではなく、個性的なワインが並べば、食の楽しみもさらに広がる。Farmer’s Marketで秋元さんに出会ったら、まずは怖がらずに声をかけてみてほしい。陽気に注いでくれるワインを、きっともう一杯飲みたくなるだろう。