【Farm Report】ありのままの自然に向き合う 自然農園TOMさんを訪れて

自然農園TOMの戸村さん、約8年間も毎週欠かさずFarmers Marketに出店してくれているマーケットの顔とも言える存在。いつも穏やかな笑顔が特徴的で、みんなから「トムさん」の愛称で親しまれています。

9月に新たにマーケット事務局に加わった私は、今回初めてトムさんの畑に伺い、普段マーケットでは見ることのできないトムさんの一面を見ることができました。トムさんの野菜はワイルドな味と表現されることがありますが、その理由も少しわかった気がしました。

成田空港から車で数分、千葉県山武郡芝山町にトムさんの畑はあります。約30年前、農家だったお父様から畑を引継ぎ農家となったそう。2代目なので自由な発想でやらせてもらえたというトムさんは、当時ではまだ珍しかった有機農業と出会い、仲間と共に農薬や化学肥料に頼らない野菜作りをスタート。同じ想いを持つ仲間は増えていきましたが、世の中の有機野菜への関心はまだまだ薄く、販路を探すのが大変だったといいます。


また当時、成田空港問題という大きな社会問題を抱えていたこの地域では、トムさんを始めとするたくさんの若者を中心に反対運動が起こり、警察と衝突することもあったそうです。トムさんお手製のおでんを囲みながら、その時代のお話しを聞かせて下さいました。トムさんは時に笑いながら話してくれましたが、正直私にはとても壮絶なストーリーでした。トムさんの温かさは、過去の様々な経験を乗り越え逞しく生きた証なのだ、と知りました。

トムさんの畑は、一言で表すと“自然体”。1,000坪を超える広い畑を1人で切り盛りし、葉物野菜を中心に多くの種類の野菜を育てています。大根と人参の収穫を少しだけ一緒にやらせてもらいましたが、太さ・長さ・色まで本当に様々。みんな違って、みんないい。それぞれの良さをそのままに育てるという、トムさんの子育てならぬ野菜育てはとても自然なものでした。

トムさんは、野菜作りについて「自然界の恵みを頂いているという感覚だ」と話します。「ありのままが面白い」という言葉の通り、虫・小動物・鳥も自由に生息し、それを崩そうとしない。畑の虫食い葉っぱはアートのように美しい。虫もクセのある野菜(パクチーや春菊など)は最後まで食べないのだと教えてくれました。虫にも意思がある。言語は通じないけれど、トムさんは常に自然と対峙し会話しているんだ、とわかった瞬間でした。

そんなトムさんは昨年80歳(?)の誕生日を迎え、次世代のことを考え始めています。長く農家をやってきた成田の地で、周辺の若手新規就農者のサポートなどを企んでるようです。青山でも積極的に若手農家さんとコミュニケーションをとって下さっていますが、若手農家さんから学ぶこともたくさんあるんだそう。何歳になっても学びの姿勢を忘れないトムさん。ぜひトムさんの笑顔とワイルドな野菜を買いにマーケットへいらしてください。

 

文:永島由梨

Farmers Market事務局スタッフ。6年半のサラリーマン生活を経て、2020年9月に転身。料理と食べ歩きが趣味の大の食いしん坊。マーケットの食材を使って、日々料理研究中。https://www.instagram.com/yuriwednes/

 

写真:松丸里歩

Farmers Market事務局スタッフ。愛称はまっちゃん。都市での循環やつながりのデザインに興味がある。ワークショップを企画したり農家さんとコミュニケーションを取ったりしながら、その可能性を楽しく探究中。https://www.instagram.com/rihomarudaizu/


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