【Farm Report】根拠のある「安心・安全」な、美味しさを探求。

茨城県取手市に畑のある『シモタファーム』さん。40年近く農薬や化学肥料を使用せずに野菜を育てている。何よりも特筆すべきことは、土壌や野菜の成分分析を行い科学的根拠を持って「安心・安全」な野菜を毎週末のファーマーズマーケットに届けてくれる。今回は、その霜多さんの畑に若手の農家さん、シェフや料理人、マーケットスタッフで伺いました。きっかけとなったのは山形・果樹園白雲の園主である松藤さんの一言。「そろそろファーマーズマーケットも、もう一回原点に帰って美味しい野菜、いい野菜とは何か?を考え直すべきじゃないか。そのためには、やっぱり最初はシモタファームだろ」と。
 
当日出迎えてくれたのは、マーケットでもすっかりお馴染みの霜多さんの奥さん(僕らはいつもお母さんと呼んでいます)。いつも元気で愉快に、素敵な笑顔を見せてくれる。まず最初に、シモタファームさんの全ての分析を行うラボに伺った。そこで伺ったのは分析の視点や、霜多さんの考える『美味しい野菜の話し』。結論から述べると、それは硝酸態窒素の値が低く、抗酸化力が高い野菜。長年の研究や分析の結果、これが今の答えだという。数値的な部分でいうと、共同で研究・分析している薬科大学の基準で決めているそう。

味が濃い、薄い、甘いといった分かりやすい美味しい野菜を目指してつくるのではなく、栄養的にも成分的にも、総合的にバランスが取れている野菜づくりを目指す。そんな霜多さんは、意外なことに野菜の品種選びはそこまで重視はしていないという。その理由を伺うと「多少の差はあるけど、どんな品種でも、必ず美味しくなっから」という。また、農業における話の中で盛んに伝えていたのは、土地に合った農業の形でやることの重要性。全ての農家にとって、間違いのない農業のスタイルはない。仕事として収入も得ながら、継続していくには、自分の土地ではどんな農業のスタイルがあるのか?をまず最初に見極めていくことが何よりも大切だと語る。

当日参加したある農家さんは「有機栽培とか、農薬・肥料不使用ということばかり考えていた自分が、なんだか恥ずかしくなりました」と話していた。普段なかなか他の農家さんの話しを伺う機会がないため、今回のツアーが今後に向けて考えるよいきっかけになったと、教えてくれた。こうして、マーケットに参加してくれている農家さんが、マーケットを離れて別の農家さんからいい刺激を受ける姿をみると、僕らスタッフもなんだか嬉しい気持ちになる。


畑を見学したあとは、皆んなでランチ。シモタファームさんのその日に採れた野菜に、新米、料理人の方が仕込んできてくれた豚肉をBBQ台でロースト。食事について、この日に霜多さんが教えてくれたのは、食べ合わせの重要性。例えばパン。「日本人はパンといったら、それだけで食べるけど、フランス人はどうですか?色んなものと一緒に食べるでしょ。あれが重要なんですよ」と。それはお米も同じ。様々な情報が溢れているけれど、霜多さんは「どんな食べ物でも、それそのものが悪いわけではない。単体で食べて十分に栄養が補えるわけはないんだから、バランスよく食べ合わせを考えることが大事。まずはそこを理解することから」と話す。

当日はランチの中で、マスタードリーフと豚肉の相性の良さを教えてくれました。実際、マスタードリーフは単体で食べると名前の通り辛みがあるけれど、豚肉(その他の肉も同様)の油と合わさると辛みが消えて、不思議と旨味に変わる。両者の相性がよく、油の吸収を助けてくれるのは既に研究で分かっているが『なぜ辛みが消えて旨味に変わるのか?』は未だに解明できていないのだそう。こうして、食べ合わせの重要性を説くのは、若い頃偶然にフランスに赴き、その地で出会った食のマリアージュの文化に衝撃を受けた霜多さんの実体験に基づいているからだ。

農業という現場から、根拠を持って食の安心・安全、美味しさを探求する霜多さん。今回畑に伺って、分析は他人を否定するためでも、自分を持ち上げるためでもなく、根拠を持って本当によいもの、美味しいものを目指していくためにあるのだと改めて感じた。


 


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