【Report】rotable in Tokyo THE FOOD/風土 EXPERIENCE

「”千葉・長野・神奈川” 三つの土地の風土、東京青山ファーマーズマーケットならではレストラン」
 
<WHY、なぜやっているのか?>
「変化する自然環境の中で日々変化する野菜の味、それが本当にうまい野菜だと俺は思う。」食の世界に飛び込んだ後、2年前にmomoGファームの中山さんが僕(横山太郎)に言ってくれた言葉です。今思えばそれが食の世界が広がるきっかけの一つでした。
  
大学を卒業して商社に勤めて7年、仕事にはそれなりにやりがいを見出していましが、人生をかけてやる仕事として「人間の本質的な幸福を追求するような仕事をしたい」と思うようになりました。それは自分にとって「人とのつながり」「自然とのつながり」の二つでした。様々な経験を経て、食を通じてそれが達成できるのではないかと考え、食をテーマに自然・人・地方・都市をつなげるような仕事をしようと思うに至りました。そして約3年前にpignonというレストランに転職し、料理の勉強をしながら現在rotbale, 土地々々の自然や風土にフォーカスしたポップアップレストランなどを主宰しています。rotableはコミュニティのようなもので興味関心のあるメンバーがプロジェクト毎にチームを編成して運営しています。(rotableWEBページ:http://rotable.jp/
 
rotableはこれまで三重県尾鷲市(年に200種類以上の魚介類が水揚げされる海と山のまちです)など地方を中心に開催してきましたが今回の開催場所は東京青山のファーマーズマーケット、東京です。なぜ今回東京青山のファーマーズマーケットで開催することにしたのか?それはここで出会った農家さんや運営のスタッフに強く惹かれるものがあったからです。
 
日々変化する野菜の味、農家さんや農法によって出る変化。なにより人間的に魅力的だと心から思う農家さんとの出会い。「食・自然・風土・人」というような興味関心を共有できる同世代の運営メンバーがいたこと。(転職し、新たな分野でチャレンジしている自分にとって大きな励みになりました)そうゆう意味で今回東京で、ファーマーズマーケットで開催するということは自身にとって特別な思いがありました。
 
(にんにくの芽を収穫するグリーンバスケットジャパンの加藤かいさん)
 
<WHAT、何をやるのか?>
食をテーマに自然・人・地方・都市をつなげるようポップアップレストランrotable。フィロソフィーの一つは「その土地ならではの風土や自然が感じられる空間を創造すること」です。その土地で手に入る食材で料理をし、その土地の木材でテーブルを作り、その土地の草花や土地のモノで会場を彩ってきました。
 
そんなrotableの今回の開催場所はファーマーズマーケット、東京。「その土地ならではの風土」を東京でどう表現するのか。私たちがたどり着いた答えは「土」でした。土を切り口にすれば、近くて遠い存在である農家さんの世界に迫れるかもしれない。その要素をここの食材を用いたレストランに重ねていこうと、このマーケットの積み重ねてきた風土を感じれるような空間を創造していこうと考えました。
 
(土について話しをする自然農園TOMこと戸村さん)
 
<HOW、どうやるのか?>
1)会場デザインについて
「土」をそのまま感じてもらえるように、自然農園TOMこと戸村さんの畑から運んできた土をテーブルの上に盛りました。驚かれるかもしれませんが、希望者には土を食べる、テイスティングもしてもらえるようにしました。「ジャリジャリはなく、フワッと溶けるようだった」という感想が多かったです。(土を食べるということは一生に一度あるかないかと思ったので、メンバーで議論しやってみようということになりました)さらにメニュー表には「シードペーパー」という数種類の花のタネをすき込んだ紙を使い、テーブルの上に盛った土と合わせてお客様に持って帰ってもらうことにしました。体験をレストラン内で終わらせてしまうのではなく、帰ってからも考えを続けてもらえたらとの考えからです。栽培を通じて、植物のベースは土なのだと体感してもらえるよう思いを込めました。会場デザインを中心となってやってくれたのはKuze Studioの久世将寛さん、野村プリシラさゆりさんのお二人です。

(テーブルの上に飾られた畑の土と、シードペーパーに印刷されたメニュー)
 
2)農家さんとの相互交流
今回フォーカスした農家さん3組にはゲストの皆様と共にテーブルと囲むだけではなく、ファーマーズマーケットの酒井かえでさんとの対談形式で、それぞれの農との向き合い方を語っていただきました。私は当日は料理に集中していたため、どんなお話をしてくださったのは全てはわかりませんが、農家さんそれぞれしっかり時間を設けてお話ができたこと。食べている料理の食材をつくった方の話しを目の前で聞けたこと。撮影した写真をあとから見たらそれぞれ笑顔があったのが良かったと感じました。ゲストの方々からも料理を食べながら生産者さんの話を直接聞けたことは、相互交流ができたことは本当によい体験だったという感想がありました。個人的にとても印象的だったのは、加藤かいさんが話している時に見せた、ももじさんのなんともいえない温かい表情でした。
 
(自身の農について話しをする加藤かいさん)
(加藤かいさんの話しを聞くももじさん)
 
さらに今回はレストランの直前にこの三つの農家さんをメンバーそれぞれ食材の調達も兼ねて訪問させていただきました。その土地の風土や畑の土、収穫を手伝いながらお話をきけたことは、メンバーにとってなりよりの経験でした。また自分たちのポップアプレストランで使う食材の畑で農家さんとつながれたことは、このレストランに皆がそれぞれ主体的な想いを持つという点でもとても良かったです。彼らとこの先も続いてくんだろうなと思えるようなつながりが生まれたように感じたことは、主宰の僕にとってとても嬉しく思える事でした。
 
(開催前々日の5/2、成田の自然農園TOMさんの畑にて)
 
3)料理について
料理は旅する料理人として各地で活動中の三上奈緒さんとタッグを組み、各農家さんの食材の素材のよさを感じてもらえるようメニューを考えました。例えば、オリーヴオイルを味わってもらうために、前菜の魚のマリネはシンプルに塩とレモンとオリーブオイルのみで味付けをしました。メインの魚料理は、キャベツの力強い味や、カブのみずみずしさを味わってもらえるように、火入れの具合を調整しました。また食材の旬をつかまえた料理にするため、食材は前日、前々日に畑に行き調達。TOMさんの畑でであった巨大なスイスチャード、ももじさんに教えてもらった完熟雪見米の玄米の扱い方。食材の扱い方だけでなく、その背景にある農家さんの考えにふれることができたことも、料理に厚みをもたせる上で非常に重要なことができたのではないかと考えています。 
 
(当日の料理の写真の一部)
 
4)写真の展示について (文:Daisuke Takashige)
木箱をお借りし、平積みにして展示台を作製。千葉、長野、神奈川、それぞれの畑の同じ時期の異なる環境/風土を伝えたいと思い、各農家さんごとにセクションを分けて展示しました。「土」というテーマが決まった時点ではまだ農家さんの畑には取材に行っておらず、どのような展示になるのか不安がありました。取材に行く前はミミズを撮りまくろうとか、土を掘って地層を撮ろうなどと、空想を重ねていたのですが、本番約二週間前に自然農園TOMに行き、解決の糸口が見つかりました。
 
隣接する森の落ち葉を畑にすき込んでいるのを見て、TOMさんが環境に寄り添って農業をしていることに気づいたのです。農薬や肥料を使わずに農業をしている農家さんはその土地に合わせた農業をしている。その様子を撮れば、その畑の土作りが自ずと写るのではないかと考えました。取材は、草花が生き生きとする日の出前4時半頃から農家さんにお付き合い頂き、6、7時間畑で作物談義に花を咲かせるという贅沢な経験をさせて頂きました。取材の成果は、当日会場でエッセイとしてお配りしたほか、今後も取材を重ねて小さな冊子にまとめてファーマーズで見てもらえるようにできたらと考えています。
 
(会場では自然とゲスト同士の会話がはずんだ)

<WHO、共に創り上げた仲間>
rotableのフィロソフィーとして、プロジェクトを共にするメンバーが組み合わさったからこそできる価値を創造しようというものがあります。今回も「この仲間だからこそできるもの」を作り上げられたのではないかと自負しています。企画の立ち上げからバックアップしてくれたファーマーズ運営チーム、自然農園TOMさんこと戸村さん、ももじさんこと中山智文さん、加藤かいさん。3人をはじめとして応援して下さった農家さん。共に料理や企画を創り上げてくれた三上奈緒さん。デザートを仕上げてくれたSmile sweets Kuさん、吉田恵さん。会場全体のデザインや運営を担ってくれたKuzeStudioの久世くん、野村さん。写真と取材という切り口でジョインしてくれた高重乃輔さん。ほかにもたくさんの運営メンバー皆さんのおかげで今回ならではの会にすることができました。
 
(片付け後、運営メンバーにて)
 
<FUTURE、この先の未来>
rotbaleは”THE FOOD / 風土 EXPERIANCE”を大きなテーマに日本各地でポップアプレストランを開く旅を続けていきます。今回も開催させていただき農家さんやスタッフの方にご指摘いただいたこと、自分自身でできなかったなと思うような反省点が本当にたくさんありました。一つ一つ向き合ってより良い会にしていきたいと思っています。次回は9月中旬に三重県尾鷲市にて海と山をテーマに開催予定です。また、旅を続ける中で僕らが得られたもの学んだものを、形にしてアウトプットしていきたいと考えております。また日本のどこかでお会いできるのを楽しみにしております。ありがとうございました。(文:rotable主宰 横山太郎)
 
(料理の説明をするrotable主宰・横山太郎)
 
<当日のMenu>
・前菜
-小カブとにんじんのピクルス、岩清水豚と干し柿のテリーヌ
-じゃがいもとにんにくの芽と自家製アンチョビのサラダ
-イシダイのマリネ
-ワラサのスモーク、オリーヴと干し柿のタプナード
-コシアブラとノビルのフリット、アイヨリソース
・にんじんのスープ
・ファーマーズのハーブサラダ、シトロンヴィネグレット
・真ハタと小カブのキャベツの葉包み焼き、新たまねぎのピューレ、せりのサラダ
・岩清水豚の炭火グリル、完熟雪見米のリゾット、クレソンのサラダとスイスチャード
・文旦とサマーキングのタルト
 

▼今回のrotableで食材を使わせて頂いた生産者さん
・Green Basket Japan
オリーブオイル、オリーブ、小かぶ、人参、ノビル、カタバミ、スナップエンドウ、コリアンダー、山椒、オレガノ
 
・自然農園TOM
ルッコラ、赤からし菜、からし菜、わさび菜、春菊、はこべ、ニュージーランドスピナッチ、ケール、スイスチャード、高菜、おかのり、キャベツ、人参
 
・momoGファーム
完熟雪見米(白米、玄米)、クレソン、せり、コシアブラ
 
・Citron et Citron
サマーキング、文旦、レモン
 
・NOLNOL BROTHERS
じゃがいも各種、玉ねぎ
 
・RYO’S FARM
リリコイバター
 
・飯島農園
干し柿
 
・シモタファーム
ディル、ミント、イタリアンパセリ
 
・Bugrass farmers
新玉ねぎ
 
・岩崎魚店(三重県尾鷲市)
イシダイ、ワラサ、マハタ、マイワシ
 
・カントリーファーム西浦(三重県南牟婁郡)
紀州岩清水豚
 
▼SPECIAL THANKS
・パタゴニアプロヴィジョンズ
・大井商店
・田中佑樹/伊勢すえよし
・Pignon
 
▼rotable in Tokyo2019 実行委員
三上 奈緒/旅する料理人 (https://www.naomikami.com/
小倉 真知子
Smile sweets Ku (https://www.instagram.com/nonored217/?hl=ja
玉水正人/sanmi Lab(https://sanmilab.com/
吉田 恵/megscakes(https://www.instagram.com/megscakes2019/?hl=ja
北爪 淑乃
高橋 心一/Human Nature (https://humannature.jp/
島部 弘之/nolnolbrothers (https://www.instagram.com/nolnolbrothers/?hl=ja
久世 将寛/Kuze Studio(https://kuze.studio/
野村 プリシラ さゆり/Kuze Studio
渡邊 桃加//Kuze Studio
若林 理世//Kuze Studio
堀口 祐樹//Kuze Studio
塚本 ゆかり/Lady Bugs (https://www.instagram.com/ladybuglovesflower/?hl=ja
Daisuke Takashige (https://www.daisuketakashige.com/
Farmer’s Market @UNU
横山 太郎/rotable主宰,Pignon (http://rotable.jp/)
 
(momoGファームにて、中山さん)

(グリーンバスケットジャパン、かいさんの畑にてかいさんと三上奈緒さん)

(自然農園TOM、戸村さん)

Photo by/Daisuke Takashige


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