【Report】Farm Tour|一度来た人が、また人を連れていきたくなるような畑づくりを目指して。千葉・くくりの森

いまでは耳にする機会も増えた有機農業。有機肥料を使い、化学農薬を使わない。今回は有機農業に力を入れている千葉県山武市のくくりの森の高木さん、飯島さんの元に訪れた。都心から1時間半ほどにある、自然に囲まれた場所の農園はかなりの大きさがあり、この季節には(1月)ニンジン、ケール、ビーツ、菊芋などが植えられている。

植物性堆肥でじっくり美味しい野菜を育てる農業

(写真:くくりの森さんの堆肥の師匠・齊藤完一さん)

農業に最も大切なのはなによりもまずは土づくりなのだという。そこで、到着してまず最初に向かったのは堆肥場。くくりの森の堆肥場は、高木さんが「有機農業の鬼」と呼ぶ齊藤完一さんが管理している。堆肥に土は一切入っておらず、ワラ、落花生の殻、コーヒー豆の絞りカスを中心に植物性の素材で構成されている。そして微生物による発酵の力を借りて堆肥へと代わっていく。完熟した堆肥には匂いが全くなく、心地よい。

驚いたのが発酵の力で温かく、まるで温泉のような湯気が立っていること。真冬の厳しい寒さで震えている中、土に触って暖を取り、都会の喧騒を忘れられた気がした。今回のFarm Tour参加メンバーも大きな袋の中に入り土をかけて貰い、まるで砂風呂のように暖を取って楽しんだ。

そして、くくりの森スタッフ・高木さんの「農薬・化学肥料不使用、植物性堆肥だから、土付きで野菜を食べたり、皮を向かずに食べても大丈夫!」の一言で、恐る恐るではあるが植物性の堆肥を口に運んでみる。口に入れると土にありそうなえぐみが全くなく、驚くほど普通に食べることができた。環境に負荷をかけずに、植物性の堆肥でじっくりと育てることに美味しい野菜の理由がある。そう確信して堆肥場から畑に向かった。

くくりの森らしい農作業
畑ではニンジンの収穫、キクイモの収穫、ビーツの葉落としを中心に数々の作業を行った。特に、印象に残ったのはキクイモの収穫だ。不規則に埋まっている小さな芋を、周りの土を掘り返しながら、見つけ出さなければならない。泥だらけになりながら土を掘り進めるのは、まるで宝探しのようだった。

くくりの森らしさを最も感じたのは、収穫中にニンジンでも、キクイモでも地中から収穫した瞬間に食べること。土ごと野菜を齧ると、作業で疲れた体にみずみずしい自然のおいしさが染み渡った。正午を過ぎても、くくりの森のスタッフ、高木さんの一言である「空腹は最高のスパイス」を合言葉にFarm Tour参加メンバーで、夢中になって農作業をつづけた。農作業後、取れた野菜を中心に作った料理を皆で食卓を囲みながらいただく時間が至福のひと時だったのは当然かもしれない。

(写真) 収穫した野菜を中心にしたたくさんの料理(ニンジンとケールのサラダ、ケールとキクイモの炒め物、ビーツのボルシチ、キクイモ漬、サツマイモ、バターナッツ、鴨とほうれん草の鍋など)


畑を誰もが訪れる場所へ

「(作った野菜を)食べてほしいじゃなくて、畑に来てほしい。」くくりの森の二人が師と仰ぐ齊藤完一さんの言葉には説得力がある。野菜だけではなく、畑づくりという根本から力を入れているくくりの森には「ただ農業をする場所」だけではない様々な魅力が詰まっていたからだ。

誰もが必要な行為であり、生活から切り離すことはできないものである食。畑に行くことで、そんな食についての新たな発見がある。そして、おいしさや健康など、一人一人が食に求める魅力に繋がっていく。今回、くくりの森でも、食べることができるほどのこだわりの土の魅力や、各スタッフの農業に対する考え方、野菜のおいしい調理の仕方まで様々な新しい発見があった。

齊藤完一さんは最後にこう言ってくれた。「また次も来たいではなく、また次は誰かと一緒に来たいを目指したい。そうしたらどんどん来る人が増えてくれる。」誰かと一緒に来たいと思ってもらえるように、そう誇りと自信を持って畑づくりをしている完一さんとくくりの森のスタッフの農業への強い思いを感じることができた。

くくりの森はイベントを中心として積極的に人を受け入れ、夏にはインターンも行われるという。ぜひどのような形でもまずは畑に足を踏み入れ、その魅力を体感してほしい。(文:林麟太郎/写真:奥野 剛史)
 
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▼今回のFarm Tourで訪問した農家さん|千葉・くくりの森
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