【Farm Report】山梨のラベンダー農家・ラヴァンドの小径さんを訪れて

山梨県ののどかな集落でラベンダーを育てている古郡さん。優しい人柄の古郡さんにはラベンダーがとてもお似合いです。そんな古郡さんは、20代半ば、東京で雑貨の企画の仕事を立ち上げ、30代半ば、大好きなテレビドラマ『北の国から』のロケ地巡りで訪れた北海道のラベンダー畑でその美しさに惹かれ、その後、趣味としてラベンダーを育てはじめました。
 
当時住んでいた松戸市から 山梨に週末通うこと5年。そして、長年住んでいた松戸市から山梨にUターン、後2年は企画 の仕事のため、山梨から東京までスクーターで通っていました。いつかラベンダーの観光農 園として出来たらと、東京の事務所を閉じ、本格的に農業の道を選択。

棚田で育てているラベンダー畑は、元々おじいさんの代まで、お米を育てていたそう。養蚕を中心とした、山間部の小さな集落で、この辺りの土地は水田に向く粘土土。水はけが大事であるラベンダーには、不向きな土壌なため、暗渠排水をし少しずつラベンダーに向いた土にしていきます。
 
これまで何度も枯れてしまう失敗にあっており、数年前から排水工事をしています。土の中深くには、今では手入れがされなくなった竹藪の竹を自分で伐り、石とを籾殻を一緒に入れて、竹暗渠を施し、水はけの良い畑にしています。ラベンダーだけでなく、環境にも優しい。

今は数年かけて土壌改良を行っている最中なので、人が訪れてもらえるようになるまでにはまだ大分先の事、との事。本来は雨の少ない良い土地で育つ高山植物であるため、山梨の高温多湿、棚田の土壌特性など、試行錯誤しながらの日々のようです。

畑には様々な種類のラベンダーがあります。「真正ラベンダー・ラバンジン・フレンチラベンダー」などがあります。中でも真正ラベンダーの品種には、北海道で選抜された、「ようてい・おかむらさき・はなもいわ」と日本の優良品種があり、香りがとても上品で気持ちが安らぎます。一粒手に取って潰してみると、香りがスーッと体に染み渡っていくのがわかり、つい目を閉じて香りに集中してしまうほどです。

また、自宅にお邪魔すると、玄関先からラベンダーの良い香りがしてきます。正体はラベンダーの精油を蒸留している水蒸気蒸留器です。自宅の台所で蒸留している精油は、釜に沢山の生ラベンダーを茎ごと入れ蒸します。熱した蒸気がラベンダーの中を通り、釜から出てきた蒸気がガラス管で冷やされ液化したラベンダーウォーターになります。するとラベンダーウォーターの上にほんの少しの精油が浮いてできます。とても希少なことがわかります。

「ラベンダーの香り」と唱った香りものの商品は沢山出回っていますが、本当のラベンダーの香りを知っている人はごくわずかでしょう。古郡さんが大事に育てているラベンダーはとても柔らかく、穏やかな気持ちにさせてくれます。生花が楽しめるのは5月末〜6月半ばにかけての1ヶ月ほど。畑を訪れたときは、天気も良く、ラベンダーの上を気持ちよさそうにミツバチや蝶が飛んでいました。虫たちもラベンダーの良い香りに癒されているのでしょうか。

また、風の流れに乗ってゆらゆらと動く紫色の花がとても綺麗です。しゃがんで見るとまるで自分がラベンダー畑の中にいるような気分になり、童心に帰ったようでした。
 
文・大沢慶芳(よしほ)
ープロフィールー
Farmers Market運営スタッフ。普段は子どもに関わる仕事をしている。好きな食べ物は米と野菜。食べ物、畑、手仕事、植物などに興味がある。人(子どもから大人まで)が、人間らしく生きていく中で必要な知恵を農業や農家さんから学びたい。

写真・シン・スンリ


                                


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