【Farm Report】堆肥から学ぶ。千葉・農国ふくわらいさんを訪れて

東京から車を1時間半ほど走らせると、千葉県山武市の「農国ふくわらい」に到着する。畑を切り盛りしているのは、まだ25歳という若さの高木くん。師匠の畑から1年前に独立し、1人で野菜を育てている。マーケットにも毎週のように出店してくれていて、いつも最高の笑顔で話してくれる。彼の笑顔を見に足を運ぶお客さんも多いはずだ。そんな彼は農薬や化学肥料を使わずに野菜を栽培していて、優しい味のする人参やビーツが人気だ。

東京で産まれ育った高木くんは高校生の時に農業の道を志し、卒業してからは専門学校に進学。その時は「有機農業は新規就農では稼げない」と言われ、一度は慣行農業(農薬や化学肥料を使う農業)を選択した。最初は自分が極める特定の野菜を探そうとしたが、学んでいくうちに身体が喜ぶおいしい野菜を作ることに興味を持ちはじめたそう。そして今の師匠に出会い、後々畑を任されるようになったとか。

農国ふくわらいでは野菜の成長のために欠かせない堆肥を自分たちで作っている。主にコーヒーかすや藁を入れている。また、地域との繋がりも大事にする彼らは、醤油蔵から出た廃棄物、酒粕なども堆肥に混ぜている。また、落花生の殻も発酵を促してくれるとのこと。そして少し専門的な話になるが、堆肥の発酵には好気性と嫌気性があり、微生物の性質によって変わるるんだとか。畑に微生物を投与しても殆どが死んでしまうが、その死骸がとても大事な栄養素になる。これを「腐植」と呼ぶそうで、腐植が起こると自立した畑になるそう。化学肥料や農薬だと人間が投与し続ける必要があるため、自立した畑にはならない。また、これは人間にも同じことが言えるだろう。病気になった時に薬ばかりに頼っていたら、自然治癒力はつかず、自立できない身体になる。


 
またこの日はビーツの収穫を手伝ってきた。畑はどうしても雑草が生えてくるため、それを防ぐためにマルチ(黒いシート)を使用する。プラスチック資材は使うものの農薬を使わない一つの農法として、ふくわらいでは生分解性マルチも使っている。このマルチによって太陽熱土壌消毒を行っている。原料はジャガイモのデンプンであるため環境にも良いが、価格はプラスチック性の物よりも3〜4倍と高め。また、保管していても1年ほどすると穴が空いてしまうらしいため、メリットとデメリットを考慮しながら従来のものと併用しているそうだ。当たり前のことだが、自然界と付き合っていくことは簡単なことではない。

土に触れるということ、とっても綺麗なビーツ色に手が染まること、高木くんのいつも前向きで明るく、周りにいる人をみんな笑顔にさせるトークが聴けて、心から気持ちがいい1日となった。

 

文・大沢慶芳(よしほ)
ープロフィールー
Farmers Market運営スタッフ。普段は子どもに関わる仕事をしている。好きな食べ物は米と野菜。食べ物、畑、手仕事、植物などに興味がある。人(子どもから大人まで)が、人間らしく生きていく中で必要な知恵を農業や農家さんから学びたい。
 
写真・渡邊桃加
Farmers Market常連さんで、多数の出店者さんと仲良し。大学で農業ビジネスを学ぶ傍ら、マーケット出店農家さんの畑へお手伝いに行ったり、区民農園で自ら野菜を育てたりしている。趣味は知り合い農家さんのフルーツなどを使ったお菓子作り。


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