【Report】現代の百姓100worksキックオフイベント -Study , Work and Life-

仕事は「探す」から「創る」時代へ
6月8日に現代の新しい働き方を提案していく取り組み「100Works」のキックオフイベントが青山Farmer’s MarketのCommunity Loungeにて開催されました。青山Farmer’s Maeketの出店者さんの中には、農業を営みながら、加工品を製造して販売したり、宿泊場所を設け農泊をしたり、趣味をとことん楽しんだり。1つの仕事、1つの会社にとらわれず自由に職を楽しんでいる人たちがいます。イベントでは、そんな多様な生き方をシェアする機会となるよう、「100works」を実践する方々をゲストに招き、青山Farmer’s Marketはもちろん、自由大学やみどり荘など数々のプロジェクトを創造してきた黒崎輝男さんと対談を行いました。そこで、黒崎さんへの働くことについての考え方をインタビューを行いました。
 
好きなものを集めていたら仕事になった

深井:黒崎さんの仕事観とはどんなものでしょうか。
 
黒崎:「こんなことが仕事になるんだ」という仕事を続けていたら、社会も付いてくるような人生でしたね。好きなものや関心事を追求して学んでいくうちに、それがお金を生み出す。ぼくは就職したことが一度もないのね。大学を出てからも、会社員の初任給より稼げるなら就職する必要はないから。最初は、旅をしながら海外で見つけた骨董品を購入して日本で売ることが仕事になった。でも特別語学が得意というわけではなかったし、アンティークやデザインを専門的に勉強していたわけでもなかった。

結果的にうまくいったから、見る目があったと言えるかもしれないけど、一番は「好き」だったということですね。それが世間の人との違い。他の人は「アンティークはどういうものが評価されるのか」つまり何が高く売れるかを「仕事になりそうだから学ぼう」としていたんですよね。でもぼくは純粋に古いものが好きだった。好きだから勉強して商売になっていったわけだけど、お客さんにも評価されて、購入した何十倍という金額で売れてしまうことも多くありました。
 
最初に扱ったのは、エジソンの蝋管蓄音機。エジソンはぼくにとってヒーローだったのね。その蝋管蓄音機をイギリスの骨董市で見つけて買ったのが始まり。当時日本ではジャズ喫茶が流行っていて、蓄音機も人気がありました。当時6万円ぐらいで仕入れたものが、日本に持ってきたら十倍ぐらいの値段がついた。他にも、夏目漱石が使っていたOnotoやWATERMANといったアンティークの良い万年筆を集めたら、これもマニアが買ってくれた。そうやって仕事として成り立っていきました。
 
骨董好きが集まって誕生した「骨董通り」

深井:同じようなことを手がける人が少なかったから成功したのでしょうか?
 
黒崎:何が売れるかを考えた結果ではなく、自分が好きなものがマーケットに受け入れられたの。蝋管蓄音機も万年筆も、マーケティングでは売れるかどうかわからないでしょう。リサーチしたって出てこないんです。ぼく自身が好きになって集めた物を、お金を出してでも欲しい人たちがいて、商売になった。運みたいなものですよ。
 
すぐそこにある通りに『CROA』(クロア)という店を作りました。CROW、カラスの文字りね。カラスはコレクションするでしょ。カラスみたいに好きな物を集めた店ですね。世界各地で買い集めた物を店に並べました。当時弟がロンドンに留学していたから、現地の物を送ってもらってそれも並べた。近所では中島誠之助さん(骨董商、古美術鑑定家)が「からくさ」という骨董屋を始めたんです。そうやってアンティーク、骨董品を扱う店が集まっていって、「骨董通り」って自称して。骨董音頭とか作って、盛り上げていったんですよ。それが正式に通りの名前になった。
 
当時はネットなんてないから、お店を作ってきれいに並べることに価値があったのね。毎週、骨董好きのマニアたちが買いにくる。まとまった額の売り上げができたから、それを元手にまた海外で買い付けをして。まずは万年筆など細かいものから始まって、だんだんインテリアや建築とかに広がっていきました。そうやって『IDEE』を創業してうまくいったけれど、最初からそれで当ててやろうなんて気持ちではなかった。
 
仕事探しはもうやめよう

深井:今、いったん就職して経験を積むことは、若者が起業する際にプラスになるでしょうか。

黒崎:ぼくは就職したことはないし、骨董業界で修行した経験もないけど、仕事は成り立った。好きだったらもっと知りたい、学びたいと思うでしょう? 好きで集めていた物が売れて、お金ができて、関心の幅も広がり、知り合いも増えて行く中でデザインについて独自に学んでいきました。
 
日本で骨董品をリプロデュース、リプロダクションする活動をはじめたら、フレンチ60sを復活させるムーヴメントになりました。芸大を出た友達とつくった鉄の工房で、古いプロダクトを修理して売ったり。新しい作家を発掘しては、その人のデザインでプロダクトを作って販売する。セルジュ・ムーユのランプもそんな中の1つです。このランプは今は世界的な名作なんだけど、当時は蚤の市で転がっていました。それを見つけて「いいな」と思って、大学の先生をしていた彼を訪ねて仲良くなって。そうやって、まだ無名だけど才能のあるデザイナーやアーティストと組んで、プロダクトを作って仕事が広がっていきました。フィリップ・スタルクもその1人ですね。
 
商売と考えたら、自分で作って在庫を持つのは効率は良くないですよね。でも好きだし、面白いなと思ってやっていました。怖いものはなかったから。こんな仕事、当時はなかったんだけど、ぼくが仕事を作ったんです。もちろん、すべてがうまくいったわけではないですよ。当時はほとんど理解されなかったけど、10年、20年経って一般に評価されたことがたくさんあります。やがてくる時代に刺さる仕事を、好きだからやっていたわけです。

それが仕事になるんだ、を実践していく

深井:好きな気持ちがないと突き詰めて学ぼうと思えないですよね。学ばなければと義務感になっては続かない。もちろん仕事として成功するには、市場とマッチするかは重要ですが。
 
黒崎:時代は変わっているんだから、もっと新しい仕事ができてこないとおかしいよね。それをやるのは若者。企業に所属することだけが働くことではないのに、唯一の選択肢になっているじゃない。失敗したくないという思いが強すぎるのか、目先の正解を取りに行く人が増えています。若者は選択したがるよね。「どの会社がいいのか」とか。ゼロからつくることは「選択」じゃなくて「創造」なんだけど、その視点がまるでない。今の若者、特に男の子はそういう傾向がありますね。自分の感覚ではなくて相対的な価値観、「世間が認める良い会社」に入ろうとする。それはぜんぜんクリエイティブではないね。
 
こういう状態になってしまったことはおかしいでしょう。時代が変わっているんだから、新しい会社ができなくてはおかしい。新しい仕事もできるはずだし、それをつくるところが面白いし、快感なんだけど、そういう選択肢がない。今が良いからって来年再来年はわからないし、10年後なんてもっとわからない。情報が多いこともあって、「どうやったら成功するか」「どんな仕事をすれば勝ち組になれるのか」ばかりを考えてしまいがち。もっとおおらかに向き合ったほうが良いと思いますよ。
 
深井:床張りとか、ユニークなナリワイをたくさん持って稼いでいる人が、青山Farmer’s Marketや自由大学の周りに何人もいます。
 
黒崎:5月には、青山ファーマーズマーケットはパン祭りで大盛況。そこでね、自作のコーラを売っている人がいるの。飲み物のコーラ。コーラって、コーラという植物の種子から作ることができるんですよ。コカ・コーラっていう大企業の商品が幅を効かせている時代に、自分でコーラを作るなんて無謀だと笑う人がほとんどでしょう。でもそれが逆に面白いのか、行列ができるほど盛況だし、実際飲んでみると美味しいの。興味があるもの、自分が好きなものを突き詰めて仕事にすることは、どんな時代でもできるんです。
 
はじめた当時は見向きもされなかった仕事が時流に乗って、のちのち企業の価値が上がる例はたくさんあります。だけど、「今」稼げている、「今」盛り上がっていることを、うまくやっている会社、イケている会社に就職するという考え方が根強い。これは問題だと思いますよ。これだけ社会が変化、進化しているんだから、新しい仕事ができてくるのが当たり前で、自分がそれをつくるんだという姿勢が必要なんです。
 
深井:成功者の体験を聞くと、「時代がよかったんだ」と思ってしまいがちですけど、今からでも時代をつくっていくことができるんですよね。

新しい時代の百姓になる「100works」プロジェクト
 
深井:黒崎さんのまわりでは常に新しいプロジェクトが始まってますよね。

黒崎:いま「100works」というプロジェクトを準備してるでしょう。「百姓」って言葉。これは 農家とイコールと思うかもしれないけど、「百姓」は「百の仕事」を意味しているんです。百って数の百ではなく、「たくさん」という意味。農業をしたり家畜を飼ったり、お酒を作ったり、工芸品を作ったりいろいろな仕事をしていた。まさにいま私たちひとりひとりに必要な姿勢じゃないかと。
 
新しい仕事をやっている人を集めて、その人たちを紹介したり、彼らが知っている「新しい仕事」を紹介したり。「仕事は1つだけ」というのも、古い考え方だよね。これからは複合的な仕事観が必要で、昼間は農業、夜に友達のビジネスを手伝うとか。週末はカフェを経営するとか。この仕事は5万円、こっちでは20万円みたいに稼いで、トータルはサラリーマンより収入がある。時間を切り売りするんじゃなくて、自分のやりたいことを選んだ上でそれが成立するのが理想じゃない?
 
自由大学やみどり荘、青山ファーマーズマーケットなどに関わっているメンバーは仕事の創造の実践をしている人たちばかり。それらを見ることで「こんな仕事があるんだ」という発想が生まれます。まずは仕事カタログ、ワーカーのカタログ的な読み物からスタートして、関連の講義とかイベントとか、SNSを作って輪を広げていく予定。コミュニティの中に入っている人には、より具体的な情報を得られる新しい仕組みも考えたいね。
 
新しい仕事や、それを手がけている人の考え方を知ることは単純に面白いし、そこで人同士が掛け合わされて、また新しい仕事が生まれていくはず。自由大学の新講義も生まれるし、講義に来る人も面白い仕事をしていたら相互乗り入れみたいに広がっていきます。近々では、国連大学で「100works」のイベントも準備しています。今年は『TRUE PORTLAND』の最新版の出版や、他にもいくつもプロジェクトが動いているので、それらとも繋げていけるでしょう。目指すのは「情報の発酵」。集まった人たちのスキルやキャリアや経験が相互作用して、繋がり、ふわーっと膨らんでいく感じね。
 
深井:仕事の枠組み自体も変わっていますよね。繋がることで新しい仕事が生まれる可能性は高まると感じます。

黒崎:1人で頑張る必要はなくて、繋がりを活かすべき。もし1つの仕事がうまく行かなかったら、そのスキルを活かせる場所を繋がりの中で探したりするといい。働く場所は東京だけじゃありません。地方でポツッと仕事をしている人がいたら、隣県でもこういう仕事があると紹介することもできる。仕事が次の仕事を生むのが理想で、方向性に賛同してくれる人は仲間になってもらいたい「100works」をこれからのムーヴメントにしていきたいですね。
 
まずは自分の情報をオープンにする。その人独自の働き方を共有して、協力できることは一緒に取り組んでいったり、「こんな人が必要だ」と思ったら声をかけられるようなメディアを作りたいね。仕事同士を掛け合わせて、新しい仕事が生まれることもあるでしょう。ポートランドに盆栽園があって、そこで10人ぐらい働いている。盆栽でそんなに雇えるほど儲かるのか?と思うんだけど、彼らは盆栽を売っているわけではないの。盆栽の育て方とか、新しい映像を作ってサブスクリプションモデルで公開しているんです。こうなると、事業としては「盆栽屋」じゃなくて 「情報産業」なんですね。旧来の事業構造にこだわらず、変化を取り入れるから大きく伸びるわけ。こういう発想が今求められている。
 
自分が好きなこと、興味があることを実践して、経験や学びをシェアする。そこに集まった人から新たな仕事や学びが生まれて発酵していく。そんな場所をつくって行こうよ。

2019.7.10

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