【Report】 NORAH TALK |「今晩なに食べる?」

2月の NORAH TALK のテーマは、「今晩なに食べる?」
ゲストはヴィーガンの方、スポーツにずっと携わる方、農業を生業とする方の3名。食にまつわる考え方を聞きながら、自分がいつも食べている食事を見つめ直す会として実施しました。
 
▼ゲスト
ヤブキレン氏 NGO LIA代表 https://ngo-lia.org/
高橋 一聡氏 Do One Good代表 http://doonegood.jp/
笹井 賢也氏 宮城県 養鶏農家 セオリファーム 代表 https://seorifarm.com/

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ヤブキさんがヴィーガンになった経緯

ヤブキレンさんは、NGO団体『Life Investigation Agency(LIA)』の代表で、環境犯罪や動物犯罪を専門に摘発している。象牙や虎の毛皮などの密輸や密売、犬や猫への虐待といった動物や環境の犯罪が日本ではすごく多いにも関わらず、それが置き去りになっていることにずっと疑問を感じていて、2010年に LIA を立ち上げた。これまでに1300件以上の事件を摘発している。
 
団体設立当初は何でも食べていたヤブキさんだが、魚や鳥の保護活動をしながら、自分は魚や鶏を食べることに大きな矛盾を感じ始め、団体設立から1年ほどでヴィーガン(純菜食主義者)になった。現在の LIA は全員が、肉や魚、そして卵や牛乳、出汁など動物性の副産物も一切取らないメンバーで構成されている。
 
自身で農薬を使わずに野菜や米も育てているヤブキさんはその様子や、ヴィーガンとして普段どういうものを食べているのかを写真や映像で紹介してくれた。
 
「何も知らずに食べ続けるのもちょっと違うのかなと思うので勉強したい」(一聡さん)
 
2人目のゲスト、高橋一聡さんは犬や猫を中心に動物と人との出会いを創造する団体、 Do One Good の代表。ファーマーズマーケットで犬の譲渡会、里親探しをするためのパークをずっと一緒につくってくれている人だ。現在は大学ラグビー部でコーチもしている一聡さんは、ラガーマンとして「肉を食いまくって体をつくってきた」。「何も知らずに食べ続けるのもちょっと違うのかなと思うので、いろいろ勉強したい」という一聡さんと同じようなスタンスの人が、今回のトーク参加者の中でも多かったかもしれない。
 
健康食品の業界から自然卵の養鶏に転身した笹井さん

もう一人のゲストは、宮城県の蔵王から平飼いの「蔵王じゅうねん卵」をファーマーズマーケットへ届けているセオリファームの笹井賢也さん。養鶏を始める前は東京で12、13年ほど健康食品の業界にいたが、取材で養鶏場にも行く中で、こんな仕事のやり方をしてていいのかなと思ってしまったという。「いろんな養鶏場、アメリカやヨーロッパにも行ったんですけども、その時に養鶏場のとんでもない世界を見てしまって、これはダメだと。僕一人が吠えたところでどうにもならないなと思ったんですが、自分だけはこんな鶏肉、卵は食べたくない、自分の子供にはこんな卵は食べさせたくない、ということで本当に自然に近い、自然卵をやろうと思って、そこから勉強し始めました」
 
ぜひ一度、セオリファームの卵を試してもらって、自然卵とはこういうものなのかというのを食べてみてもらえればと思います。ファーマーズマーケットに来るお客さんからは、「ニワトリに何を食べさせてますか?」と聞かれることが多いとのことだ。

ランチのテーマは「ファーマーズマーケットのローカル」
 
ゲスト3人のお話を聞きながら、参加者で長テーブルを囲み、サラダとパン、りんごをいただいた。サラダはこの日も出店していたシモタファームさんからハーブを中心に、そして青梅ファームさんからはケールを。ディルが入っているハーブは香りが独特で、アマランサスは抗酸化作用が高く、ベビーリーフの時は葉っぱで食べやすい。
 
パンは代々木上原のカタネベーカリーさんの1週間分のロスパン(残ってしまったパン)を冷凍してもらって、コミュニティークラブのランチなどで使わせていただいている。今後はロスパンを粉砕してビールの醸造に使うなど、無駄にならずに再度おいしく活かす方法を他にも計画中。
 
そしてりんごも同じくこの日の出店者さん、山梨県の Mercato 北信州さんのもの。知ってる人からこの場所ですぐに買える、という「ファーマーズマーケットにおけるローカル」がこのランチのテーマだった。
 
ヴィーガンの人は普段何を食べてる?

ゲストの3名の方から自己紹介があった後はヤブキさんが、普段ヴィーガンの人は何を食べているのか、という話をまずしてくれた。確かに、ヴィーガンの人がすぐ身近にいないと、なかなか具体的に分からないことだ。ある日の夕食の写真をプロジェクターで見せてくれながら、「天ぷら、タラの芽とかその辺で採った山菜とかそばとか。あと自分の家でつくった野菜とかそういうものを普通に食べてます。特別大変なこともなく。白米も作っているので、ご飯も食べてます。でも大豆が一番多いですかね」と、ヤブキさん。
 
ヴィーガンについては、動物性のものを食べてなくても、野菜などを作るのに動物性の堆肥が使われてるんじゃないですか、ともよく聞かれるそうだ。「動物性の堆肥を使ってる人ももちろんいますけど、本来植物が育つのに動物性の堆肥は必要ないです。なぜなら、山とかを見てもらえばわかるんですけど、山って大きな木がグイグイ育ってますよね? 動物とか虫の死骸はもちろんあるんですけど、ほとんどが植物なんですよね。植物が新しく腐葉土になって、土になってまた木を育てる、というようにほぼ植物の循環で成り立ってる。なので動物性のものがなくても十分土は良くなります」
 
ニワトリが餌からとる化学物質は、産む卵の白身に全部残ってしまう

ヤブキさんは、農薬散布の映像や、除草剤を撒いたところと撒いてないところを比較する画像も見せてくれた。「ファーマーズマーケットに出店している、すごく一生懸命配慮してつくってる方の農産物を買うことは非常に重要な行動」
 
また、養鶏業界における化学物質の現状については笹井さんが話をしてくれた。「ニワトリが餌からとる化学物質は、基本的に白身に全部残ったまま卵を産んでしまう。それをみなさんが食べると体に入り、また食物連鎖になる。卵アレルギーには2種類あるんです。持って生まれた体質で卵のタンパク質が合わないお子さんと、白身に入ってる化学物質に反応するお子さんと2種類あります。日本の場合、食のモラルがあまりにも低すぎる。それをどうすればいいのか、みんなが協力してできたらなと思います」
 
一聡さんは「農薬とかについては詳しくないので、パッケージに書かれている認証のマークなどに振り回されている」としながらも、犬の譲渡会をしている自身の活動と重ね合わせながら考えるところがあると言う。「何がいい悪いじゃないくて、ファーマーズマーケットで農家さんに会って、この人が信じられるか信じられないかみたいなところ、気が合うか合わないか、間に入ってる仲間や人を信用して物事を判断してます」
大学ラグビー部の指導をしているので、「肉を食わせないで体をでかくするにはどういう方法があるのか、新しいことを勉強しないといけないこともある」という課題も話していた。
 
ヤブキさん、ブロイラー養鶏場に潜入

ヤブキさんは、潜入したブロイラーの養鶏場の映像も見せてくれた。一般的には「養鶏場は見せないのが基本ルール。だから潜入するか、取材しか見る方法はない」と、笹井さん。対照的に、セオリファームは見たい方はどなたでもどうぞというオープンな方針で、ブロイラーの養鶏場の光景とは似ても似つかないという。

ファーマーズマーケットのチームでは1月に、和歌山県田辺市龍神村で地元素材の飼料で健康な鶏を育てている、とりとんファームさんを訪問させてもらったが、今回の工業製品のように育てられるブロイラーの映像はまったく違うものだった。
 
ゲストの食にまつわる考え方を聞いた後に、参加者それぞれの晩ご飯を発表

その日の夜に食べるものを各自が発表するワークに入る前に、参加者からは「いい環境にしようとしてやってる畜産の人たちもよくないという考えですか?」、「持続可能性という意味ではヴィーガンはいいと思うが、植物も痛みを感じるのでは?」、「菜食と健康の因果関係はどうなんでしょうか?」といった質問も出ていた。

ゲストの方たちがどういうことを考えて食べるものを選んでるのかなどを聞いた上で、参加者のみなさんにはいつも食べてるものを思い浮かべながらこの日の晩ご飯で食べるものを書いてもらい、簡単に発表してもらった。
 
すでに肉食を1年くらいやめている方、これからやめていきます、という方もいれば、肉や鶏を使った料理を食べますという方たちももちろんいた。他にもシンプルなメニューだったり、野菜やサラダ、そばを食べる方が多かったりなど、約20人の夕食は本当に人それぞれだった。多くの選択肢の中から選んだ夕食には、その人の食に対する考え方が大なり小なり反映されていることも感じられた。

一聡さんはこの日のイベントを振り返り、「食べる食べないは人それぞれとして、大事なのはそれがどこから来たのかとかを知ることだったり、情報として持っていた上で判断するっていう行為自体がすごく重要なこと」と語った。ファーマーズマーケットでは今後も、食についての学びを深めていこうというトークやワークショップをどんどんやっていきたいなと思っています。
 
ゲストの方の活動や伝えてくれることをただシリアスに受け止めるのではなく、そこから学び取って知った上で、自分の生活を変える変えないを含めてどうしていこうか考えるきっかけになるような会をやっていって、いろんな人たちに参加してもらいたいなと考えています。同時に、聞く側と話す側の垣根をもっと越えられるような会にもしていきたいので、一緒に企画したい、こういう企画をやりたい、という方も声を掛けてください。

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▼Farmer’s Market Community Clubでは活動メンバーも随時募集中
Farmer’s Marketに集う農家さんを中心とした、NORAH(野良)的な感性を持つ多様なメンバー。時代や季節の変化に応じて、柔軟に生きること。自由な発想で自分の生業を生み出していくこと。日々変わる状況を楽しみ、力に変えていく。そんな生き方を実践しているのが、このFarmer’s Marketに集う人々です。

いま、10年目を迎えるFarmer’s Marketにおいて、農家さんを支え、共に学び楽しみ、農的暮らしの探求するためのコミュニティが必要だと考えました。その活動の中心となるのが、このFarmer’s Market Community Club。都市における農や食の新たな関わり方の提案の一つであり、実験の場でもあるFarmer’s Market。このムーブメントを更に発展させ、継続していくための、メンバーを募集します。
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