【Report】圧倒的な鮮度が、美味しさにつながる。東京・Ome Farm

農業者出身はゼロ。これからの〝東京の食〟を担う、小さく、強い農業チーム。
アパレル、メッセンジャー、画家。元々は全く農業とは別の業界で働いていたメンバーで構成される、東京・青梅市を拠点に活動する農業チーム・Ome Farm。

昨年からFarmer’s Marketへの出店がスタートし、この1年弱の間に都内の名だたるシェフをはじめ、現在Farmer’s Market内でも多くのリピーターのお客さんを抱える。

僕自身も野菜を購入していて、実際に食べて思うのは、食べ続けても飽きない野菜だな、ということ。いくらでも食べれてしまうような感覚。これを〝美味しい〟と呼ぶのかもしれない、と最近は感じている。
 
Ome Farmさんの野菜の美味しさは、一体どこからやってくるのか?今回、その理由を探りたいとの思いから、Farmer’s Market Community Clubのメンバー、そしてOme Farm代表の太田さんとも親交の深い株式会社ラッシュジャパンのスタッフの方と共に畑に訪問した。

まず最初に訪れた畑で、待っていたのは美しい野菜たち・・・ではなく、数年前に借りてからまだ手付かずの状態になっていた畑。メンバーが10人以上集ったため、普段なかなか手がつけられていなかったという草や大木、かつての茶畑の名残をまず片付けて、開墾するところからはじまった。

今まで既に使われている畑に伺う機会は幾度となくあったものの、今回のように〝これからはじまる畑〟に伺ったのははじめて。その光景を目の当たりにして、若い新規就農者の方々が開墾から挑戦していく精神を肌で感じる思いがした。

考えてみればOme Farmさんも事業独立して先日でまだ1周年という。本当にこれからの〝東京の食〟を担っていくチームなんだ、と改めて実感した。

圧倒的な鮮度が、一番の美味しさの理由。
開墾の作業をひと段落させてからは、移動して皆んなでランチに。代表の太田さんによる2種のカレー。ランチを食べながら、いよいよ今回の本題。「Ome Farmさんの野菜の美味しさは、一体どこからやってくるのか?」という質問をぶけてみた。
この質問に答えてくれたのは島田さん。メッセンジャーを経験した後、前職では固定種を専門で扱う種屋で働いていたOme Farm内でのタネのプロ。そんな彼からの返答は意外にもシンプルだった。

「野菜の美味しさの理由を挙げるとすれば、それは圧倒的な〝鮮度〟じゃないですかね。苦味やエグ味をなくす交配種のタネ(F1と呼ばれるタネ)が多いいが、雑味がないと、その野菜の特徴が生きない。例えばトマトも酸味があることで甘みを引き立てて、より味の深みを感じやすい。そういう意味で、昔からの種(固定種と呼ばれる昔から採り繋がれた種)は、味が美味しいのは間違いない。交配種を否定しているわけではなく、昔からの種は味の雑味や深みを感じやすいということ。それでも、野菜においては一番は収穫してすぐに届けることだと思います。」と、島田さん。

写真|中央奥に座るのが島田さん。
写真|Ome Farm・代表の太田さんがランチに作ってくれたケール&チキンカレーとターメリックライス。

その他、参加者の方から挙がったデクさん(島田さんのあだ名)へのタネについての質問とその答えは以下。この質疑を通じて感じたのは、固定種で野菜を育ててはいるももの、決して交配種のタネを否定をしないデクさんのフラットな視点。『美味い!』という、味を追求した結果、今の固定種で野菜を育てることに至ったということを、丁寧に教えてくれた。
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Q1.タネを変えれば、野菜のできは変わる?

A1.交配種と呼ばれる新しいタネは味だけを重視しているわけではない。昔からの種は味が美味しいのは間違いない。それは苦味やエグ味を無くす交配種が多いことも関係している。そもそも、雑味がないと、その野菜の味の特徴が生きにくい。例えばトマトで言えば、酸味が甘みを引き立てて、より深みを感じやすい。

交配種を否定しているわけではなく、昔からの種は味の雑味や深みを感じやすい性質があるため、味としては美味さが伝わりやすい。それでも、一番は収穫してすぐに届けること。

Q2.固定種と、そうでないタネの見分け方は?

A2.一般的に表示の義務はないけれど、【○○交配】と書いてあるものは、基本的には交配種。【育成】の文字が入っていれば、それは固定種と思ってもらっていい。ただ、実際に絵袋だけを見て見分ける、というのはプロでも難しい。

Q3.いま育てている野菜のタネの選抜の仕方は?

A3.野菜全て選び方が違う。例えばトマト。かじって美味い!と思ったものからタネ採りをする。自分たちがいいと思ったものを畑に残しタネをいただく。タネ採りをすることで、青梅の土地には合っていくが、品質をよりよく、ということだけを考えているわけではなく、一緒に野菜と寄り添いながらやっていくイメージ。元から交配種をつくろうとは考えていないが、仮に交配種をつくろうと思っても約10年かかる。そのため、今年出る新しい品種は約10年前から改良がスタートして、ようやく世の中に出てきたもの。交配といっても、10年後の食の嗜好を考えてつくる難しさがある。
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写真|池袋出身のOme Farm代表・太田太氏。英語、スペイン語を話せるため、マーケットでも外国人のお客さんを多くリピーターに抱える。(*昨年夏に畑に訪れた際、畑に育った向日葵と向き合う太田さん。)

池袋生まれ、池袋育ち、後、NY経由でファッション業界から農業へ。Ome Farm代表・太田太氏。
さて、遅ればせながら、Ome Farmを語る上で外せない存在が代表の太田さん。この日、まだあまり伺うことのできていなかった、ファッション業界から農業へと踏み込んだ経緯の一つを、分かりやすく教えてくれた。

「アパレル時代に売っていた数十万円のバッグや洋服は、対面した一人の人間の欲を満たすけど、それは瞬間的〜期間的に満たすだけ。そこに消費されるだけのファッション産業の限界があると思った。さらに数百万円に及ぶ事があるイベントや展示会案件などは本当に価値があるのか常に疑問だった。しかも当時の上長たちはその問いに一切答えられなかった。だからか、心のどこかで本当はこれらの商品にそんな値段の価値ないだろ?って、思っている自分がいた。でも、今こうして俺たちが売っている数百円の野菜だったら、バッグや洋服と同じ値段で1日100人以上もの人を喜ばすことができるし、健康にも出来るし、その値段も適正だと思う。何より味に自信があるし、生産背景やクオリティに嘘がないんだよね。それに、バッグや洋服などの商品を買った相手には下手したら一生会えないけど、野菜とハチミツのお客さんは毎週喜んできてくれる。そっちの方が人を幸せにするんじゃない?って思って。」

前職で抱いたファッション業界への違和感が、今の農業界へ参入していった一つの大きなきっかけとなったという。

NYで見てきたFarmer’s Marketのスタンスを、東京で
続けて太田さんは、普段なかなかFarmer’s Marketでも伺い知ることのできない、個人としての、Ome FarmとしてのFarmer’s Marketへの思いを伝えてくれた。

「まず、ローカルの食材をフレッシュでハイクオリーティーで提供すること。それが当たり前の感覚で。自分自身がNYにいたときにFarmer’s Marketのユーザーで、実際に見てきたものそうだったし。日本に帰国後も、Farmer’s Marketに買い物に来ていたし、他の国でも市場に食材を買いに行っていた。(本当は肉とか魚も日本のFarmer’s Marketで買えたらいいけど・・・)でも、日本にはなかなかその感覚(ローカルの食材をフレッシュでハイクオリーティーで提供する)がまだない。自分が、農業をはじめた時点でいつかこの場所(Farmer’s Market@UNU)に関わることになると予感していて、そのときに思っていたのが、八百屋さんに農家が頼るのではなく、農家として自力で販売して稼ぐ力が必要だと感じた。Farmer’s Marketのクオリティを、一農家として上げて行きたい。これからは、都内の飲食店との出会いの起点を土日のでFarmer’s Marketで今以上に作りたいし、現にそうなりつつある。」

また、自分自身が出店する際の密かな楽しみとして「買ってくれる方の野菜の組み合わせも楽しい。」と教えてくれた。ある方は「君たちの持ってきている野菜を見て、他のお店で何を買うか決めるよ。」と伝えてくれたんだとか。Ome Farmさんの販売する野菜を起点に、買い物を考えてくれる人が増えてくれていること何よりもが嬉しいという。強面ながらも、とてもピュアな一面を持ち合わせているのが太田さんの魅了の一つでもある。

当初は土曜のみの出店だったが、今では毎週末土日にFarmer’s Marketに出店しているOme Farmさん。まだまだ伝えきれないことばかりだが、まずはぜひ一度、野菜やはちみつを味わってみて欲しい。同じ東京都内で採れた旬の食材たちが、四季折々の食の楽しみと可能性を伝えてくれる。

写真|開墾作業後の畑での一枚。木々もあり、まだまだ畑には程遠い、野原のような状態だった。
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▼今回のFarm Tourで訪問した農家さん|東京・Ome Farmさん
https://www.omefarm.jp/

▼Farmer’s Market Community ClubではFarm Tourを定期的に開催 *活動メンバーも随時募集中
Farmer’s Marketに集う農家さんを中心とした、NORAH(野良)的な感性を持つ多様なメンバー。時代や季節の変化に応じて、柔軟に生きること。自由な発想で自分の生業を生み出していくこと。日々変わる状況を楽しみ、力に変えていく。そんな生き方を実践しているのが、このFarmer’s Marketに集う人々です。

いま、10年目を迎えるFarmer’s Marketにおいて、農家さんを支え、共に学び楽しみ、農的暮らしの探求するためのコミュニティが必要だと考えました。その活動の中心となるのが、このFarmer’s Market Community Club。
都市における農や食の新たな関わり方の提案の一つであり、実験の場でもあるFarmer’s Market。このムーブメントを更に発展させ、継続していくための、メンバーを募集します。
http://farmersmarkets.jp/communityclub/
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2019.4.10

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