【GOOD BREAD MARKET 特別寄稿】いつでもパンは私たちと共に。|写真・文 入江葵

いつでもパンは私たちと共に。

2015年11月「CRAFT BAKERIES」という本を、仲間と共につくった。原動力は「パン愛」だ。手前味噌だが、今読んでも「CRAFT BAKERIES」は色褪せていないし、「現役」だと思う。それは、私たちが魅せられた、普遍的で日常的なパン屋さんを取材しまとめたから。掲載したパン屋さんのほとんどは、今も人々の生活を支えるパンを焼いているし、私たちはそのパン屋さんたちが今も変わらず大好きだ。
 
つくり手の想いを内包した記憶に残るパンは、時代を越えて愛される。それは現代に始まったことではない。
 
古代メソポタミアからはじまり、エジプトで発酵パンが誕生したのは約5000年前。そこから全世界に広まり、各地域に寄り添った形で食卓に並び、世界に存在するパンは数万種類ともいわれる。私たちは様々な種類の小麦や酵母で、多種多様なパンを焼き、食してきた。

今、改めて、私にとってパンとはなんだろう、と考えてみた。青山パン祭りを主催していた当時から変わらないのは「大好きなパンやパン屋さんについてもっと知ってほしい、そこにある物語を伝えたい」という気持ち。今思えば、当時の私たちを掻き立てていた情熱の源は「暮らしの中心であり続ける」という、パンと言う存在そのものが持つ圧倒的なおおらかさだったのかもしれません。


カンパーニュの語源は「カンパニオ」で、ラテン語で「パンを分け合う人々」の意。フランス語では仲間のことをコパン「copain」と言い、「パンを分け合って、食べる関係」がその語源だそう。大きく焼いたパンを、家族や仲間と分け合い、共に食事し、私たちは共に生きてきた。
 
食事の基礎であり、人の集まる場所をつくるパン。
仲間や家族と分け合うことがその原点。
パンって愛だと思いませんか。

今日も丁寧につくられたパンとお気に入りのジャムやお供にを探しにGood Bread Marketへ。当たり前の日常だからこそ、良質のものを選びたい。それはきっと、自分を愛し、隣人を愛し、豊かで色のある日々に繋がってゆくことだから。


写真・文|BREAD LAB 入江葵
幼少時からパンを愛して食べ続け、巡ったパン屋さんは国内外合わせて1000軒近く。大学卒業後はモデルやMCを仕事としながら、パン屋巡りを継続し、パンコーディネーターとしても活動。2018年より拠点を沖縄に移し活動中。


2021.12.8

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